鳴り響く魔法使い


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STR0MAG16AP0タイプ★刹那

AGI149VIT0CP26星座おうし座

DEX20MNT50運勢↑↑↑隊列後列

装備ネームノーツ「魔法使い」

獲得ダイヤモンド



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No.207 四月
No.1215 五月
No.3274 六月
No.3275 七月

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>>天女#565191
天芽 葉
「お母さん、いっぱい待たせちゃってごめんね。
 ほら、大好きだったお団子もあるから」

目を閉じると体の輪郭も、意識さえも世界に溶けていくような感覚がした。
すれば夢は終わりゆく。──忘れ物は夢のまま。
わたしは前へ一歩踏み出した。
あたたかな光射す方へ、告げる。



        「──ただいま」


                  『天の川』の向こう側 〆
>>天女#565160
天女だったもの
はらり。天女の姿が解けていく。
花見を終えた桜が散るように、ひとたび散り始めれば次々に星空に舞い上がっていく。

「あの子の……咲希が好きだったものを持っていきましょう。
 抱えきれないほどたくさんの、宝の山をつくってあげるの」

それはきっと、あの女の子の母や家族がそうしたように。

>>天女#565133
天女
──最期の言葉を交わし終われば扉をくぐる。
どこまでも広がる満点の星空の下、車窓に手を振った。

がしゃん。音を立てて扉が閉まる。
星間鉄道は次の駅へと向かっていく。

帰ったら何から始めようか。
止まった時間を動かし始めるのは、止めていた時間が長いほど手がかかる。
いくつか頭をよぎった末に、ああ、と手を打った。

「あの子に会いに行くことが何よりよね」

あの子が天に昇った川の近く。
地上の『天の川』の傘下に佇む小さな碑を思い浮かべた。
>>車掌#565146
天女
「あら、あら~。嬉しいお言葉なのだわ。
 ほんとうのお姫様みたいに見えたのなら、わたしの演技力も捨てたものではないのね」

深酒さえしなければ……
嘘だらけの彼女の、ある意味で素の姿だったらしい。

「ええ。こちらこそお世話になったのよ。
 いつか天を見上げて、星の明かりの間に窓の灯が見えたら手を振ってあげる!」

送り届けると、あなたの言質をとって会釈をかえす。

「この列車旅のことも忘れないのだわ」


──そうして、止めた足を前へ踏み出すだろう。
>>車掌#565131
天女
「名残惜しいけれどね」
「わたしの分までユリカのこと連れて行ってあげてほしいのだわ」

言葉にするまでもないお願い。
あなたはこの星間鉄道の車掌なのだから。
その仕事ぶりは十分目にしてきた。
>>天女#565128
天女
騒がしいほど賑やかだった車内はすっかり空席が目立つようになった。
見回せば夜に包まれたような静寂が隙間から顔を覗かせている。
もちろん未だ目的にたどり着かぬ者たちも少なくないけれど。
天女はその空席をひとつ増やすことに変わりない。
整理するほどの荷物を持たない天女の席は、綺麗さっぱり片付いていた。

遠く車窓の向こう側に視線を移す。
残る彼らが行くであろう遥かな空を想って見つめた。
そこにもうわたしは行けない。

……やがて景色は動くのをやめて、扉が開いた。
>>天女#565118
天女
この列車にはいつの間にか乗っていた。
朧気ながら切符を切ったのは覚えているけれど、きっとどこか降りるべきというべき駅は無いのだろう。
この星座盤は閉じるのと同じように、夢が覚めれば元の場所に帰れるはず。
その点で自由切符は便利だった。

「ええ、本当に楽しかったのよ?
 随分と自由に──それでもおとなしかったほうでしょう?
 わたしは物を壊したりなんて、して…無いのだわ?」

言葉尻は疑問形で。
お酒が記憶を明後日に流していないならばの話。
天女
「結局、来たところと帰るところは同じになりそうなのだわ」

手にした切符は白いまま。
行く宛のない自由な列車旅は結果だけ見れば堂々巡りをしただけのなんて事のないものだった。
果てが見つけられたら、と。
そう思いはしていたけれど、最初から探す必要もないものだった。
天女は歩く。
羽衣を失った足取りは只人のようにゆっくりと。
飛びもせず、ひっくり返りもしない。

「車掌さん。わたしは星座盤ここで降りていくのよ。
 星の海を観光出来て楽しかったわ」

#星間鉄道
>>ユリカ#558569

まるっこい頭をそっと、風のようにひと撫でして。
そのまま座席のあいだを歩いていくだろう。



           宝の山には透き通る羽衣が、ひとりで揺れていた。
>>ユリカ#558569
わたし

「──いってらっしゃい、ユリカ!」

>>ユリカ#558569
天女
「これからも、ユリカのお供は傍に居るんだもの。
 忘れ物の心配はわたしの方ね」

これから先これは、邪魔になる。
人の身にあまるものを盗んだ者は大抵ロクな結末にならない。
だからわたしは、ひとつ。
忘れ物をすることにした。


「名残惜しいけれど時間なのだわ。
 ありがとう。それから……」

さようならは、言いたくなくて。
>>ユリカ#558569
天女
「……ええ」

──夢は覚めるものだ。
この胸に抱いた熱は、もうあの子だけじゃなくて。
隔てなく分け与えられる気がするけれど。
そう、していたいけれど。
前を向いた。

「おねえさんはもうすぐ降りなきゃ」

天女は余った袖の中でぎゅう、と拳をつくった。
己にも言い聞かせるように、踏み出しかけた足を縫いつける。
人の子には時間を止めることも、星を渡ることもできないものだ。
>>ユリカ#558569
天女
瞬きをひとつ。露を切る。
振り返ったあなたと目が合った。
いつの間にかにじんだ輪郭が見せる人の子のかたちは、流れ星が運んだ夢だろうか。
それともこの世界の、あの人ならざるかたちこそ緩やかに揺蕩う夢だろうか。

「────、いま」
「っ、ぅ……」

思わず息をのむ。
途切れた言葉、『おかあ──』と。
須臾のひと時は天女の輪郭をかき乱した。
かりそめの姿をなげうって、"わたし"はその細い腕を引いて、離さないように抱きしめてやりたかった。
離れ離れになる母子など、ああ、けれど。
>>ユリカ#558569
天女
「ほんとのさいわい……素敵な夢なのだわ。
 あなたのお母さんが、かなしむよりもたくさん幸せになれるよう祈ってるのよ」

言葉を紡ぐたびに、星の火は胎動するように明滅する。
絶えずうねり、踊り、けれど恐ろしさはなく。
女の子も、"わたし"も一緒に、揺りかごのようなあたたかさに包まれている。

その光には妙な懐かしさを覚えた。
ずっとそこにあったはずの、はじまりの火。
失くしたはずのものがなんて事のないところにあったと気づいたような、
あっけなさと安心感で瞳が潤んだ。
>>ユリカ#558569
天女
「ユリカはいい子ね」

天女は笑う。
眩いばかりの星の火に溶かされたあなたの姿を、
自らの手をすり抜けていったあなたの雄姿を、
目を細めて嬉しそうに見ていた。

天女が与えたのはほんのわずかなそよ風。
受け止めて前に進むための帆がないと肌を撫ぜるだけの小さな力。
けれど、小さなあなたには全身で目一杯に受け止めて、星の海を泳いでいる。
>>ユリカ#557955
天女
「それでも……それ、でも……」
「列車に乗って星と並んだあなたにはいつまでも、溺れてほしくないと思うのだわ。
 目を開いて、前を向いて、燃えるような星の川を眺めるの」

どうか笑えていますように。
どこにも飛んでいけない今のわたしから、走り去った列車へ祈りが届きますように。

「そうしたらわたしはきっと許すのだわ。
 お母さんはそれが一番のしあわせだから」

おとなは、こどもになんでも格好つけるものだと思っている。
>>ユリカ#557955
天女
子どもの素朴な疑問は、随分難しい質問だった。
いくつか述べるべき言葉と述べられる言葉とが交差していく。

「だけどね。
 もしもわたしが、お母さんだったら悲しいのだわ。
 ユリカにも負けないくらい、泣いて泣いて、涙の川に溺れてしまうくらい泣くのよ」

抱きかかえるように顔を近づけて、今度は頷いた。
こくりと息をのむ音がする。
目頭が熱い。心臓を握りしめられるのならそうしたいくらいに、唇が震えた。
>>ユリカ#557955
天女
女は一部分をオウム返しに。
ぼう、と遠くを見つめた。
どこか知らない駅のホームで、
お母さんをおいていくあなたと、あなたを見送るお母さん。
一方通行のすれ違い。
そこにわたしは居ない。

なのにわたしはずっと、ずうっと遠くを見つめてしまった。

「……わたしはユリカのお母さんじゃないから」

ふるふる。首を横に振った。
あなたから零れ落ちた熱を吸い取った羽衣は、ずしりと重みを増して肩にのしかかる。
>>ユリカ#556622
天女
そうしてしゃくりあげるのが止まった頃合いに、穏やかな調子で刺激しないよう口を開いた。

「ユリカはお母さんと……はぐれたの?
 置いてきたくなかったのに置いてきてしまったから、悲しいのかしら」

言葉選びは慎重に。
核心に触れそうで触れない。
ある意味でそれは得意分野だった。
己の心臓が早鐘を打たぬように、事実という名の剥き身の刀身を覆う。

「そうね。それはきっと、とっても悲しいことなのよ。
 だから泣いても大丈夫。
 悲しんでも大丈夫。
 他のことはその後で。それまでこうして待っているのだわ」
>>ユリカ#556622
天女
「えっ、ええと」

突然の涙にたじろぐ。
けれどすぐにあなたに寄り添って、へたりこんだちいさな体を包んだ。

「悲しいことを思い出したのかしら?
 よしよし……大丈夫、大丈夫だから落ち着いて……」

何が大丈夫なのかはさておき。
涙声で滲む断片的な情報を整理しながら、その背をさすった。
泣いている理由が分からなくとも自然と体が動いた。
夜泣きをする赤子をあやすように。
忘れても忘れられない動きが天女を動かしていた。



 
 
 
 
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