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>>ユル#523404
アル 「私が食べてるとユルは美味しいのです?」 特別変わった食べ方なのかと首をひねる。 厳しくもない。が、優しくもない。 誤魔化されている気がしてちょっと眉根を寄せた。 少し後ろにいれば完全に壁と化す大きな彼から顔を出せば。 「わあ~! 真っ青なのです!」 小さくも多くの花を咲かせる、青たち。 声をあげては目を輝かせて、近寄ればそっと屈む。 「この子可愛いのです!ネモフィラより葉が丸っぽいのです! ふふふ~、ユルが見つけた最初の青なのです。 リンゴとこのお花、揃ったのです!」 ふんわり、鮮やかな花弁と葉を指先で撫で、微笑んで。 「……プレゼント、ありがとうなのです。ユル」 次いで、お気に入り探しをしてくれた彼に。 違う青ふたつ、並んで。溢れる笑顔を。
>>ユル#523404
アル 逃がさない。 掴んだ手に与えられる悪魔かれの熱。 「ユ、」 悪い子と言いながら、まるでそれを望んでいたかのような。 もっとおいでと誘うかの如き、甘美な証。 「ゅゅ、ゆっ……!?」 捕らえるために伸ばした手は、待ち伏せの罠に囚われて。 少女は指先を、翼を、裡なる熱を。震わせて囲まれる。 揺れた黒翼から降りゆく薄明が、はらり。ひらり。 天使を策略に堕とす悪いひとへと。 逃げられてしまう焦りから。 逃げられないという焦燥へ。 ──けど、嬉しくて。 「ゆる……?」 代価がなければあげないと、そんな素振りをするくせに。 意地悪に繋ぐものへ小さな力を籠めてしまう。
>>アヤノ#519690
アル 「今は同じさくらはないですが、同じお花と服があるですから。 キミの国ときっと繋いでくれるです!私、結構あちこち行きますので! アヤノの故郷の名前が知れるとわかりやすいのですが」 寂しげにもとれる間に、笑みを。旅が多いらしい天使。 「ふふふ〜! 大人っぽい評価を貰えることは少ないので嬉しいのです。 アヤノの国に行ったら、お姉さんみたいなひと、って紹介されるのでしょうか」 なんてまんざらでもない様子で。落ち着きはなくて、元気有り余る姉だ。 「あ。あの件覚えててくれたのですね! ちょうどこの服装にも合いそうなのです。……とと、」 店を後にしつつ、約束のひとつを叶えるべく外へ。 よたよたな歩き方は格好がつかないものの、楽しんでいる様。 さて、約束が果たせる彼女にとって良い場所はどこだろう。きょろ。
>>アヤノ#519690
アル 「ふふふ~、いつか見せにいきますから」 探して集めて、どんなものが手に入るだろう。 その時はきっと、彼女の国も近いだろうから。楽しみは積まれて。 「アヤノには私がそう見えているのですね……なんだか感激してしまうです。 私は結構な捻くれ者の天使です、そう言ってもらえるのはあまりないですから。 そんな私で在りたいものです。 ……アヤノも一人っ子でしたか。そこもお揃いなのです!」 どちらかと言えば嫌悪の対象ばかりだった天使はその印象に驚きつつも。 慣れないけど嬉しい評価に翼をぱたぱた揺らして。 「はいなのです!もうひとつの約束にも、この服のままがきっといいはずなのです。 む……歩き方が結構難しいですね。ふふふ、アヤノの真似をして歩きます!」 もうひとつのお楽しみ。頷いて。 からころ、歩きなれない変わった靴で退店を。
>>ディーヴェル#518557
アル 「わあ~、お守りのお裾分け素敵なのです! 石をこうやって包んで飾るネックレスもあるのですね。ふんふん……」 微笑ましげにその欠片を見やる。石を大切に守りながらも魅せるそれは、こちらの文化にはなかった品物だ。 「ふふふ~、目の色を交換しあったみたいなのです。好きを交換し合うみたいです。 小さな月明かりふたつ、標には心強い味方なのです!」 ささやかながら確かな光を零す月色に、行く道を定めた彼女に。 これからですね、と激励と笑顔をひとつ。 「お花も空も好きなのです。いいでしょう~! 悪魔さんはですね~、金色の一等星みたいな目をしているのです! なかなか見せてくれないのですけど、とても綺麗なのです~」
>>ユル#516997
アル 「それではユルと楽しいと嬉しいが半分にならないのです。寂しいです」 ぷち不満げ。 「私の味覚を伝える方法……何か媒介の道具があれば……」 悶々。少女にとっては割と一大事。美味しいは幸せなのだ。 あまり興味はないようだが、少しお裾分けできればいいのに。そんな雰囲気で。 「ふふふ。だからキミはちっとも悪魔さんらしくないのです。 でもキミ自身にはあんまり優しくないようですけど、ユル?」 困るけどいい、だとか。あまり味がしないけどいい、だとか。 自分自体にあまりこだわりがない、と感じなくもない。 周囲を見渡しながら歩くことしばし。彼の呟きに翼を揺らす。 「青、綺麗ありましたです!? ユル、ユル、もっと近付くのです!」 ぽふぽふ長い背中を羽根で押しつつ、風そよぐ青へ。 広場の片隅。彼が綺麗な青としたそれは、何なのだろう。
>>ユル#516996
アル 「キミも望まない結果なのですか。 ……、不器用さんなのです」 小さな空白は、脳裏によぎるかつての苦い記憶。 望むせかいをつくろうとして、何度もやり直し繰り返したから。 少し、わかる気がした。 「──ふふ、ふ。上等なのです。 正攻法以外で良いなんて、捻くれ者にはおいしい話ですよ」 なら、駄目。とは言わなかったのだ。 潤んだ瞳は瞬きひとつで引っ込んで、不敵に笑う。 「ね……ユル」 一度離されたその手を追って、掴む。するり絡むように。 目を閉じていようがいまいが、傍ここに熱が在ることから逃さない。 「キミが私の時間から目を離せないように……。 好き勝手に与えてしまうのですから」 ふわり。悪魔とは言い難い彼の頬を、黒翼が柔らかに撫でる。 羽根先の薄明が、誘う熱さを押し付けながら。
>>アヤノ#515166
アル 「その時は、さくらに関するお土産を持ち帰りたいのです。アヤノもつけていますから」 互いに褒め合いながら微笑みあって。異国同士の当たり前を分かち合う。 「ふふふ、私はアルお姉さんということなのです? 妹というものがいないですから新鮮なのです。アヤノの方がしっかりしてそうなのです」 くすくす笑うそれはくすぐったそうに。翼を揺らして。 薄青と薄紅。確かに揃いの姉妹のようだと、互いの服と装飾を眺めみて。 「わぁ、アヤノも買っていくですか!私もキキョウの服、買っていくのです! 最近は赤い星や宝の星でお買い物がしやすくなったですし、ご褒美なのです。 キミに選んでもらった星空なのです。ふふふ〜!」 長い袖をつまんで揺らしながら、気に入った様子。
>>ディーヴェル#512855
アル 「……ふふふ、少し怖がって肩が上がっていた印象があったですけど。もう今は大丈夫そうなのです。自然体が一番なのです! 騎士様、ディーヴェルの騎士様になったのですね。 おめでとう、なのです。ディーヴェルは騎士様の歌姫様、でしょうか?」 なんて歌の天使に笑みかけて。 「つぼみ、ひとつ。花開いたのですね」 きっと彼女が最も咲かせたかったつぼみ。まだまだたくさん、これから。 騎士様と一緒に咲けるように水を注ぐのだろう。 いいですね、とちょっぴり羨まし気に。くすり。 「キミはあの時既に翼があったですから。 私はそこにそれが『在る』と教えただけなのです。 よかったのです。出逢いを、再び繋げられて。 あ……秘密ならいいのですけど、一緒の道具ってどんなものにしたのです?」 自分が提案した縁の繋ぎ。少し気になったから。 |
>>アヤノ#512786
アル 「キミの故郷は黒い髪がいっぱいなのですね!?私と反対なのです。 ふふふ~、見慣れない景色を見てみたいものなのです。 髪の色もおそろいなのです!今日でおそろいが色々集まったのです~!」 外出を始めてから、意外な共通点も気づかなかったそれも増えて。 他者と揃うことなどなかった天使は、くすぐったく。 「ふふふ~!褒め褒めのアヤノなのです!ありがとうなのです。 私は好きなものを答えただけなのです。アヤノのおすすめが素敵だったのですよ!」 いいものを選べたのは彼女のおかげ。自分には和服というものに馴染みがないから。 その知識と感性は故郷から繋いできたものだろうか。穏やかに目を細めて。 姿見に映るふたり。同じ髪色と翼と服。 「ちょっとアヤノの国に来た気分なのです。同じ文化の衣装を纏う、楽しいです!」 全く同じではなくて、でもおそろいでもある。その塩梅を天使は気に入った。
>>ユル#512215
アル 「……つまり美味しいが私の半分も感じられないのです!?」 流石に驚く天使。何か呪いでもかかってしまったのだろうか。 「……ストレス溜まらないのです。それを感じることを捨ててやめたのです。 完成した天界を保って、護り続けるために。お馬鹿なのです」 気に食わなそうに、けれどどことなくどうしようもない知人を語るような口調で。ちょっと溜息。 「どれを選んでも好きだからいい、なのです?」 干渉せず、ただ肯定する。不思議な価値観で、新しいもの。 赤い領土も魔王と女王の手の内へ。少女も次を探して。 「青は……木の実はなかなかなさそうなのです」 美味しそうとは言い辛い、自然界にあまりない色。 果樹園を抜けながら、近付くは鳥の鳴き声。水源で生き物が跳ねる音。草花が集う切株広場。青は、過るだろうか?
>>ユル#512215
アル 「欲を言えば、それでいいわけがないのです」 ちからを分け合うくらいなんでもないし。 彼が欲しいものをつくるくらいなんでもない。 そもそもそのつもりで傍に、来ているのだから。 「取引したからって貰う好きは、いやなのです」 そう決められたから決められた通りに。 そこに天使の欲する熱はないも同然。 「契約だからってつくられる気持ちは、いやなのです。 本来の感情を捨てているも同じなのです」 星天神のように。と。 自分はそうなりたくないし、成れない。 彼女が捨てて棄てて、その集まりも"私"に成ったもののひとつ。 「ユルの好きは、欲しいです。もっと。もっと!です! でも……、気持ちを取引するなんて、いやです!」 欲しい、チャンスを逃したくない、でも。 押し合う欲望に視界が少し潤んで。複雑な笑みを、ひとつ。
>>ユル#512215
アル 「……キミは、やっぱり悪魔さんには向いてないのです。 おいしい話なら持って行ってしまってもいいのにです」 どこまでも寛容で優しい、真っ白で天使みたいな悪魔。 ほしにひとに平等に愛を注ぎ、自由を与える物好き悪魔。 「どうして、そんなに心配して与えてくれるのです?」 「私、キミから貰ってばかりなのにです」 今ここに、在ることさえ。 欲まみれで捻くれ者の天使は、閉じたその眼を見上げるまま。 「…… "本当に" ですか。 私としたことが、大事なところをうっかりしていたのです」 確かにそれは、とても欲しいものだけど。 今この取引を逃したら、もう手に入らないかもしれないけど。 そう思えば、切なく胸が詰まってしまうけど。 →
>>ディーヴェル#511981
アル 「あ!久しぶりなのですディーヴェル!」 翼ぱたぱた。 「! 無事一緒に居られそうということなのです!? よかったのです、行き来できるのならどちらの故郷にも遊びに行ける欲張りセットなのです! お揃いを魔術補助の道具に……ナイスアイデアなのです~! ……ふふふ、ディーヴェル頑張ったのですね、きっと。 前より雰囲気が丸い感じ、するです」 想いも道も繋がったかと、ちょっと揶揄い混じりの嬉しさを。
>>アヤノ#512033
アル 「そうなのです!天界には白っぽいひとばっかりでしたので、私の髪は歓迎されなかったのですけど。アヤノと一緒、嬉しいのです。アヤノと並んでいると、馴染める気がするです!」 ちょっと悪戯めいて笑う。 特別この髪色を排斥するわけでもなく、ごく自然な友人は居心地がいい。 「キキョウ、というのですね。確かに輝く星のかたちと、似ている気がするのです。ふんふん……」 生地に咲く星型の花を眺めて。それから。 「あ!その星空みたいなの、いいです!空にお花が咲いているみたいなのです! ふふふ、これ、着てみるのです!」 紺色の生地に空色の桔梗、その服を手に頷き。彼女を真似してぽち。ぽち。試着の窓を手間取りつつ出すと── 「わ~。どうでしょうアヤノ!」
>>アヤノ#505590
アル 「ふふふ~おそろいの翼なのです! アヤノは髪の色も翼の色と近いのでより合うのです! ここに来てからは、あまり黒っぽい髪を見ていないのです。 近いもの、嬉しいのです! 私も着替えたら翼、出してみるですね」 なんだか知人友人まわりは白っぽいんだと可笑しそうに笑みながら。 ぱたぱた動く翼は生まれたての鳥みたいだと過った。 「はいなのです!私も着てみたいのです~! 好きな……柄……柄……」 悶々。柄というものをあまり身に着けないものだからちょっと迷い。 きょろきょろとおしゃれな服たちを見回して、ふと。 「あ、それならお花があるものだと嬉しいのです。 星空みたいなのも好きなのですよ。そのあたりなら何かあるでしょうか……」 ちょうど花の話をしていたのもあり、彼女がさくらを身に着けているのもあり。 そちらに興味を引かれたようだ。そわそわと、彼女が着ているものに近い服はないかと探し始めるか。
>>ユル#503907
アル 「食べながら多分甘い。って言うと同じ気がするですよ?」 木の実は確かに蜜があるが。感想にしては遠く、首傾げ。 「ふふふ~! 星天神の思うままなんて嫌なのです。 つまらないのです。いっそ恐ろしいのです。 誰ひとり、何ひとつ『違うもの』がない天界なのですもん」 思うままを叶えるため生じたズレのなさ。 完全に整い在り続ける、完璧な世界。 「食べてしまった天使たちは "調整" されてしまったですけど」 だが──そこに在るものに、個というノイズは持たされない。 天界のかたちを崩すもの、もしもというズレは赦されない。 「あちこち口を出したらもっと締め出されたのです。ユルならリンゴ、どうしたです?」 くすくす、可笑しそうな悪戯の笑み。 赤い領は手に入ったが、青い領もこの地にあるのだろうか。
>>ユル#503902
アル 「気持ちの代価……なのです?」 困ったように微笑む天使。酷いなと、本気半分。 「──相応それ以上の感情ねつを。ユルだけに」 しぃ。人差し指を唇に添えて。 落とす声量、零す吐息は密やかに。 総て等しくなど見飽きたから貪欲に。 「キミはつくれないのです。でも、私がよしとするものなら……キミの代わりにつくり、それを所有する権利が手に入るです。 新たなちからを得ると同義でしょう?」 彼がやりたくともできぬことを提示しよう。 手を伸ばしたくなるように。 「小さなものから大きなものまで。 キミの望むせかいを、つくることもできるのです」 初めから変わらない。惑星じぶんを、彼に賭けようか。 金のほしを、見つめて。 |
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