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>>天女#563039
女の子は彼女―― 天女ではなくなった彼女が、いつまでもそばにいるような気がして、しばらくそのまま、ぼうっとしていました。 きっとこれからも、 星海のどこかではじまりの火の気配を感じた時や、 居眠りから起きて、やさしいゆりかごのなごりを感じた時に あの時自分の頭をなでた、彼女がそばにいるような気がして、振りむくのでしょう。 → |
>>天女#558249
女の子 まばゆく、まばゆいあまりに、ちいさな命の輪郭がにじんだ。 真っ白い星の火を背に、抜けだしたその人に振向く。 しあわせをあげたかった『だれか』――お母さん、 お母さんのような彼女に、まだ甘えていたい。 ずっと甘えていたい。 けれども、きっと別れはちかい。 おそらくこうしている間にも、降車の時間はせまってきている。 天女は、降りる支度をしていたようだった。 女の子は、列車を降りない。 →
>>天女#558249
ユリカ 「、ゎ」 「たし おかあさん が、 ほんと、の、さいわいになるなら! っど、で、できる わ …ええ きっと わた、し そう、する」 『目を開いて、前を向いて、燃えるような星の川を眺めるの』、 天女の祈りを追い風に、帆を張った船のように。 とん、輝く髪をたなびかせ、女の子は天女の腕をすり抜けた。 窓の外の星の火に目を開く。 にらみつけるくらいに眼差した宙は、 →
>>天女#558249
ユリカ (おかあさんは、かなしんでいる。 かなしませたのは、わたし。) 自らの母に、涙に溺れてしまうほどのかなしみを与えたことを、女の子は、許されないことをしたように思った。 会えなかった母。悲しみに暮れる姿が明滅するように思い浮かんで、しんしんと胸が痛む。 (もしも生まれることができたなら、しあわせをあげたかった。 もしも生きられていたら、かなしみのときはそばにいたかった。 それが、できなかった。) 『それでも』、と気丈な声が涙を区切る。 →
>>天女#557652
ユリカ 赤子がそうするように、天女のうでのなかにもぐりこみ 分別もないようで、羽衣でごしごしとなみだをぬぐっている。 『泣いても大丈夫。悲しんでも大丈夫。』くりかえされる大丈夫、という言葉にうなずきながら―― 「わたし が かなし みたいに いま おかあさん かなし、い の?」 こどもは、おとなはなんでも質問に答えられると思っている。
>>天女#557652
「…… おかあさん ね わ、わたし をっ、おいかけた わ ずいぶん、はしった、けれど おくれ てしまった。おい つかなかった…」 曖昧なこの星の世界で、そんな光景が本当にあったかはわからないけれど… そんなふうに、置き去りにしてきた。 そんな気がする。 →
>>天女#557652
ユリカ 「う ぅ」 天女のやさしい手つき。声色。 経験したことはないのに、なつかしい気がする、不思議な仕草。 鐘を振り回すようにみだれていた息が、ゆっくりととのっていく。 「…ぇ…」 いくぶん鎮まったようすで、けれど涙は止まらない。 しずくははらはらとこぼれて、毛並みの上で熱い露になる。 「れっ…」 列車が走り出して。 →
>>天女#556553
ユリカ(わあっ) 「わあーん」 にぎらされた哺乳瓶をかかえこんで、へなへなとその場にへたりこむ。視界の中で天女の微笑みが涙に歪む。 女の子はにわかに、声をあげて泣き出した。 「お」 「おかあさんは わたしを ゆるしてくださる かしら!」 思い出した。 なぜ、どうして、自分は今ひとりでここにいるのか。 悔いのような、謝罪のような言葉がぽろぽろと、涙と共にこぼれ落ちる。 「わたし おかあさん にっ… …おかあさん をっ ひとりにっ、おいてっ、て、しまっ た」 |
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