Eno.32 統合制御システム:ラピス  record . - トイランブル

物理コンソールを、指の腹が叩く音。
旧式のモニターに踊る文字の列は、休みを知らない。
しかし、

「何だこのくだらねぇ報告データは。」

苛立ちの声に、途切れる。

「おい、ポンコツ。なんの心算だよ、これは。」

ディスプレイの縁を、ノックする。
何の意味も無い行為だが、それ故にその意図を明確に伝える。

『如何いう心算も何もありません。
 観測事象を、正確に報告しています。』

その音声に、微か、ノイズが混じるのは、恐らくスピーカーの劣化。

「だったら観測機器センサーも寿命だな。」

馬鹿馬鹿しい、と言う代わりか。
視界から文字列を追い遣り、仰ぐ。

「こんな論理矛盾だらけのもん、如何しろってんだ。」

胸ポケットから一本を取り出し、口に咥える。

『禁煙ですよ。』

返事は、点火。
吸い込んだ煙を、わざとらしく吹き散らす。

『もお。精密機械なんですからね。』

しかし、脇に置かれた金皿には、その灰の跡が山と積まれて居る。

「役に立つ精密機械なら、気も使ってやる。」

煙は、その機械の隙間まで染み渡るか。

『立ってるじゃないですか。
 こうしてちゃあんと、正確に、データも提出しています。』

やや、ノイズが重いのは、或いは非難と抗議の色を表す様。

仕事カネにならねぇデータを、どーも。」

横の補助コンソールを小突く。

「仕方無ぇ。例の依頼でも片付けるか。」

ぼやきに点火するのは、今度はその機械駆動。
低い音が、身を預けた座席シートごと、周期に揺らす。

『あれ、やっぱりやるんですか?
 実入りが少ない、って文句言ってたのに。』

旧式モニターを横に追い遣り、視界を開ける。

「お陰様でな。
 おい、地図エリアデータ出せ、ポンコツ。」

中空、ホロディスプレイに、情報が浮かび上がる。

『ポンコツって呼ぶの、やめて貰えます?
 マスターがちゃんと名付けたくせに。』

金皿に捩じり込み、火を黙らせる。

「良いからさっさと申請しろ。」

追加表示されたホロは、既に受領を表示していた。

『とっくにやってますよ。
 では、機体コードの音声承認をお願いします、マスター。』

答えが先か、その鉄の躯体が奔るのが先か。

「RAPID STRIKE。出撃する。」








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