Eno.178 白飴兎ナイタン 記録⑦:キャンディ一粒の奇跡 - トイランブル
ナイタンには時間がありません。
みんながどんなに優しくて親切でも、あんなに強い憎悪のうさぎに勝てるわけがありません!
もっと何か、事態を大きくひっくり返せるようなものが必要です。
ナイタンを含む喜怒哀楽のうさぎたちは、夢で繋がっています。
憎悪のうさぎは、夢の中でナイタンに話しかけてきましたし、現実にも口を出してきました。
それができるのであれば、ナイタンの側から他のうさぎに会いに行くことだってできるはずです。
明晰夢を見る方法。
夢の確かめ方を決めて、寝る前に見たいものをしっかりイメージして。
それから、目を閉じました。
ここはどこですか、って……お客さん、うちを知らんのかい?
ここは空色工房。空にまつわる魔道具専門店や。看板商品は空飛ぶマント!
なんで機械で喋ってんのか、って?お客さん、遠慮があらへんね。
まあええよ。アンタには話さんとあかん。
ボクがもうちょっと若い頃……まあ今でもじゅうぶん若いけどな、まだ見習いやった頃や。
ボクにはようできた相棒がおってなあ、いつもいつでも一緒にいたもんや。
いつも何遍も助けてもろて……それやのに、嫌な顔ひとつせえへんええ子や。
そんで、ボクと相棒で、そん時はまだ開発中やった空飛ぶマントの飛行テストをやってたんや。
長距離行って戻ってこれるか、ってな。
もう何回もテストしとったから、簡単に、いつも通り終わる……そのはずやった。
けど、森に差し掛かった時……急に木の間からなんかが飛び出してきた。
人よりでっかい、ドラゴンみたいな魔獣や。
あー、魔獣いうのは、アレや、人を襲って食うてまうモンスターって言うたらわかる?
そう、ボクら待ち伏せされとってん。
アイツは真っ直ぐこっちを追っかけてきた。ボクら必死で逃げたで。
でも、素で飛べるヤツに道具使わんと飛ばれへんヤツが勝てるわけあらへん。距離は縮まるばっかりや。
なんとか逃げ続けて、遠くにレスキュー隊も見えてきたけど、もう限界やった。
アイツはボクに狙いを定めて、突っ込んできた。
……でも、ボクは無事やった。
相棒がボクを突き飛ばして、身代わりになったんや。
ボロボロになって墜落してく相棒を必死で追いかけた。
魔獣はレスキュー隊がやっつけにかかってくれたから、もう追っかけてこんかった。
木々に突っ込みながら、なんとか相棒を捕まえた。けど、あまりにひどい怪我やった。
このままやったら、治癒魔術かけても治りきる前に死んでしまう……
魔術の勉強はたっぷりしてたから、なおさらそれがようわかった。
相棒が死んでしまうのは、どうしても嫌やった。
ずっと助けられてばっかりやったのに、ボクは相棒を助けられへんやなんて、そんなんは絶対に嫌やった。
ボクな、魔法でキャンディ作れんねん。うちの一族にだけ伝わる魔法や。
どんな味がええか、どんなことが起きたら楽しいか想像しながら、魔力を込めて固めて、キャンディにすんねん。
せやからボク、お祈りしたんや。ボクはどうなってもええから、この子を助けてくれ、って。
この子の目を覚まさせる、元気にさせるキャンディが欲しい。そう願った。
そしたら、ボクの喉に激痛が走って。気づいたら……手の中にキャンディがあったんや。
これや!と思って、相棒の口にキャンディを入れた。そしたら、傷がみるみる癒えて……
全快とはいかんかったけど、十分治療が間に合うくらいにはなった。
お医者さんは奇跡やっていうてたで。
で、相棒を助けられたかわりに、ボクは声をなくしたわけや。
せやから、魔術の詠唱もできんくて、魔道具なしでは魔術を使えんくなったんよ。
相棒には後でめちゃくちゃ怒られたわ。けどな、それでも嬉しかった。生きててくれることが、何よりやったから。
優しいねんな、お客さん。かわいい顔して。
せやからな、ちっちゃい泣き虫さんにアドバイスや。
大切な誰かを守れるくらいの力を持つんや。
武力やなくてもいい。知識も立派な力や。
大事なものを手放さんでええだけの何かを持っとくんや。
みんながどんなに優しくて親切でも、あんなに強い憎悪のうさぎに勝てるわけがありません!
もっと何か、事態を大きくひっくり返せるようなものが必要です。
ナイタンを含む喜怒哀楽のうさぎたちは、夢で繋がっています。
憎悪のうさぎは、夢の中でナイタンに話しかけてきましたし、現実にも口を出してきました。
それができるのであれば、ナイタンの側から他のうさぎに会いに行くことだってできるはずです。
明晰夢を見る方法。
夢の確かめ方を決めて、寝る前に見たいものをしっかりイメージして。
それから、目を閉じました。

歓喜
「<いらっしゃい、ちっちゃいお客さん。>
<空色工房にようこそ。どの商品をお求めですか?>」
「<いらっしゃい、ちっちゃいお客さん。>
<空色工房にようこそ。どの商品をお求めですか?>」
ここはどこですか、って……お客さん、うちを知らんのかい?
ここは空色工房。空にまつわる魔道具専門店や。看板商品は空飛ぶマント!
なんで機械で喋ってんのか、って?お客さん、遠慮があらへんね。
まあええよ。アンタには話さんとあかん。
ボクがもうちょっと若い頃……まあ今でもじゅうぶん若いけどな、まだ見習いやった頃や。
ボクにはようできた相棒がおってなあ、いつもいつでも一緒にいたもんや。
いつも何遍も助けてもろて……それやのに、嫌な顔ひとつせえへんええ子や。
そんで、ボクと相棒で、そん時はまだ開発中やった空飛ぶマントの飛行テストをやってたんや。
長距離行って戻ってこれるか、ってな。
もう何回もテストしとったから、簡単に、いつも通り終わる……そのはずやった。
けど、森に差し掛かった時……急に木の間からなんかが飛び出してきた。
人よりでっかい、ドラゴンみたいな魔獣や。
あー、魔獣いうのは、アレや、人を襲って食うてまうモンスターって言うたらわかる?
そう、ボクら待ち伏せされとってん。
アイツは真っ直ぐこっちを追っかけてきた。ボクら必死で逃げたで。
でも、素で飛べるヤツに道具使わんと飛ばれへんヤツが勝てるわけあらへん。距離は縮まるばっかりや。
なんとか逃げ続けて、遠くにレスキュー隊も見えてきたけど、もう限界やった。
アイツはボクに狙いを定めて、突っ込んできた。
……でも、ボクは無事やった。
相棒がボクを突き飛ばして、身代わりになったんや。
ボロボロになって墜落してく相棒を必死で追いかけた。
魔獣はレスキュー隊がやっつけにかかってくれたから、もう追っかけてこんかった。
木々に突っ込みながら、なんとか相棒を捕まえた。けど、あまりにひどい怪我やった。
このままやったら、治癒魔術かけても治りきる前に死んでしまう……
魔術の勉強はたっぷりしてたから、なおさらそれがようわかった。
相棒が死んでしまうのは、どうしても嫌やった。
ずっと助けられてばっかりやったのに、ボクは相棒を助けられへんやなんて、そんなんは絶対に嫌やった。
ボクな、魔法でキャンディ作れんねん。うちの一族にだけ伝わる魔法や。
どんな味がええか、どんなことが起きたら楽しいか想像しながら、魔力を込めて固めて、キャンディにすんねん。
せやからボク、お祈りしたんや。ボクはどうなってもええから、この子を助けてくれ、って。
この子の目を覚まさせる、元気にさせるキャンディが欲しい。そう願った。
そしたら、ボクの喉に激痛が走って。気づいたら……手の中にキャンディがあったんや。
これや!と思って、相棒の口にキャンディを入れた。そしたら、傷がみるみる癒えて……
全快とはいかんかったけど、十分治療が間に合うくらいにはなった。
お医者さんは奇跡やっていうてたで。
で、相棒を助けられたかわりに、ボクは声をなくしたわけや。
せやから、魔術の詠唱もできんくて、魔道具なしでは魔術を使えんくなったんよ。
相棒には後でめちゃくちゃ怒られたわ。けどな、それでも嬉しかった。生きててくれることが、何よりやったから。

歓喜
「<そんな訳で、ボクの声がないんは、
奇跡を起こして相棒を助けた勲章なわけや。>」
「<そんな訳で、ボクの声がないんは、
奇跡を起こして相棒を助けた勲章なわけや。>」

歓喜
「<……って、あかん、お客さんガチ泣きしとるやん。>
<ごめん、ごめんて。タオル持ってくるわ。>」
「<……って、あかん、お客さんガチ泣きしとるやん。>
<ごめん、ごめんて。タオル持ってくるわ。>」
優しいねんな、お客さん。かわいい顔して。
せやからな、ちっちゃい泣き虫さんにアドバイスや。
大切な誰かを守れるくらいの力を持つんや。
武力やなくてもいい。知識も立派な力や。
大事なものを手放さんでええだけの何かを持っとくんや。

キャンディ一粒の奇跡
「<ええか、待っとったって奇跡は起きん。>
<奇跡は自分で起こすもんや。よう覚えとき。>」
「<ええか、待っとったって奇跡は起きん。>
<奇跡は自分で起こすもんや。よう覚えとき。>」