Eno.173 世羅 双什郎  記録④:二律背反のジレンマ - トイランブル

僕は、何かを間違えたのでしょう。

清十郎殿が、……あんな、

…………。

多幸感から引き戻されて、ひどい一日でした。

一晩、考えました。



誰よりも終わりを恐れていたのは、僕自身だった。

寺の息子として、何度も葬送を見てきました。

老いも、若きも、子も、親も、男も、女も、善人も、悪人も、

みんな等しく、いつかは死ぬ。終わりが来る。

母は僕が物心ついてすぐ亡くなりました。

僕は、人が死ぬということを、よく知っています。

誰も彼も、人が死ぬということを、忘れている。

死を前にして、口々に後悔を語る。

もっとああすれば、こうすればよかった、って

だから、だからこそです。死を想えメメントモリ

いつか終わることを、皆が知っていれば、きっと後悔は減る。

終わりが来るからこそ、苦しみはいつか終わると、今の刹那を愛そうと、

移り変わりゆくこの世を、大切にできると、そう思っていたのです。

だから僕は、弾けて消えるシャボン玉みたいに、いつか終わるこの世が、尊いと

終わりがあることこそが尊いと思って、 そう、思っていたのに



刀を抜いて、柘榴を零して、崩れ落ちる清十郎殿を見て

わかってしまった。

友と呼んでくれたひとを……初めての友人を、喪いたくないのです。



矛盾だらけだ。

僕は何に殉じればいい?

僕を好きだと言ってくれた彼のために、何ができる……?








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