Eno.346 藍堂  ある男の手記④ - トイランブル

几帳面で神経質そうな文字が並んでいる。



この滅茶苦茶な身体を見てもらえる機会を得た。

どうやら、今も中にあれが居る様な事も無く、まだ人間でもあるそうだ。
その点については、素直に良かったと思う。

ただ、この体は連中にとって最適な器として作り変えられているらしい。

ふざけんな。冗談じゃない。
私は、お前らの為の物件じゃない。


対策をしないと危険を伴うと言われたし、実際そうだと思った。
なので魔術師に話を付けてもらったが、こんな話になるとは想像してなかった。

ヤバい魔導書を使って罠を張った上で、あれを招き入れるだなんて。

確かに、効果は有ると思う。何も対策しないより、ずっと良いとも思う。
此方も腹に据えかねてはいるから、反撃出来るならしたいとも思う。
善意からの提案なのも、間違いない。
彼自身も(此方にとってはほぼ無償にも関わらず)重い代償を支払ってくれる訳だし。

が、正直怖い。
と言うか、この状況に陥って怖くないなんて人間が居たら見てみたい。

一度死んでるのだから、私の精神が消えるのは百歩譲ってまだ良いとして
下手したら、あれが私の身体を用いて周囲の人間を次々殺す可能性すら有る。
それはさせないとの事なので、彼等を信じるが。

怖いが、同時に、私は酷く恵まれた人間だなとも思う。
心配して、力になろうとしてくれる相手が多く居るのだから。

こんな、ろくでなしのどうしようもない悪人だというのに。
私自身は、彼女等の問題を解決出来なかったというのに。
本当に、身に余る話だ。


どうか、全てが終わった時に皆無事であります様に。


                これが遺書にならない事を願って A.S.








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