Eno.309 雀躍のシギロッタ ガール&ゴーレム:白昼の大通り - トイランブル
おもちゃ箱の形を成しているとされるのは此処、トイランブル。
奇妙奇天烈なモノに満ち満ちている地が連なり、謎がもたらす矛盾と日常を送る人々が住まう、箱庭の世界。
四通八達の中央広場より東に伸びゆく大通りは、デカルト通りと名付けられている。
左右に立ち並ぶ商店が掲げる看板には、どれも判別困難な幾何学図形が記されており、パッと見ただけでは区別はまるでつかない。
ただ、見る人からすれば、看板の図形は瞬時に理解できる記号であるらしい。
判然とした態度で目当ての商店へと進んでいく住人達。看板を見て、即座に目的地を定めて歩き出す。
大勢の人々で煩雑としている通りである筈なのに、誰に尋ねるまでもなく、彼等の動きはまるで1つの流れが定着している。
そんな大通りの流れに取り込まれず、露天から隣の露天へと進んでは止まるを繰り返す2人組の姿があった。
1人は軽装な格好をした少女のシギロッタ。
歓喜の声を上げながら、落ち着きのない動きでひっきりなしに陳列された玩具の玩具に飛びついている、快活な錬金術師だ。
そして彼女に追従しているのは、大人の平均をも越える大きさを誇る、人型ゴーレムのジンクムだ。
岩石をそのまま手足のパーツとして組み合わせた無骨な巨躯は、そこにいるだけで威圧感を放っている。
彼女達は明確な目的を持たず、デカルト通りに並ぶ商店を散策していた。それは迷いなく移動する住人達が織り成す流れを乱す行為に等しいものだと
思えたが、不思議とこの2人組に呼びかける人の姿は誰もいない。
ジンクムは石造りの躯体に内蔵された魔力を巡らせて、不明瞭な結論を再び導き出そうとしていた。
ゴーレムであるジンクムの目的は、人の守護である。自らを造り上げた主と同じ存在を、あらゆる脅威から守ることである。
それを遂行する為に故国の人間を守り続け、造物主の血脈に連なる子孫を護るために異世界へと追いかけてきていて、今に至る。
その目的に関しては一片のズレも抱いていない。そう認識しているからこそジンクムは疑念を抱いていた。自らが収集した情報と記憶を照らし合わせて生じる、差異。異界の尺度とは如何なるものか、絶えず掴みかねている。
そんな中、トントコトコ、と小気味よい小太鼓の音を鳴らしながら、主と定める少女が戻ってきた。
露天の商品を物色していたシギロッタが、満悦といった様子で棒状の太鼓の物品を振っている。
見慣れぬ形状の代物であるが、この街における玩具の一種のようだ。ジンクムは内蔵されたコアに情報を記憶させる。
同時に魔力による透視を行い、危険性が無いかの判断も遂行する。そして玩具に危険性が無いことを確認し終えると、ジンクムは静かに主の行動を見守り続ける。
そんな間にも、主であるシギロッタは屈託のない調子で話しかけてくる。
奔放で落ち着きのない主であるが、同郷のゴーレムを無視するほど無関心な人物ではない。
彼女は頻繁に臆面もなく言葉を投げかけてくる。傍から見れば、寡黙な石像に話しかける妙な少女だ。
けれどそうやって振る舞う姿は、ジンクムの記憶を遡れば初めてではない。
ジンクムは再思考を行う。護衛遂行中に認識した情報の中から、何を提示するべきか。
この街に住まう住人に関して、この街を形作る世界とは如何なるものなのか。己の記憶と知識が内包するのは、己が世界の人の在り様のみ。
故に今のジンクムには、明快に提示できる情報はない。しかし──
主は今この場で語ることを、望んでいるとジンクムは理解している。であれば己が内に抱く智見を提示するべきだと判断する。
些か彼女が望む意向とは異なるとも推測できたが。
シギロッタの答えに対し、緩やかな駆動音を立ててジンクムは肯定の意思を示す。人が抱える停滞にナゾが潜り込むことで、
元からそこにあった事態が不明瞭な謎となる。アーティファクト協会の青年が伝えてきた情報を整理すると、そういう言う事になる。
だからこそシギロッタは街の各所に潜むナゾを打ち払い、困っている人達を助けているのだ。お付きのジンクムも、そんな彼女の意思に従って同様の
行為を進めている。そこに相違はない。それを踏まえた上で、ジンクムはメインストリートを行き交う住人達を見据える。
観測できた範囲において、この玩具箱の住人は同じことを繰り返している。だが、そこに大きな支障は生じていない。
満ち溢れるナゾが彼等に停滞をもたらしていても、季節が移ろうような変化が訪れたとしても、彼等は何事もなく同じ問題を繰り返し、躓く日々を繰り返しているのだ。
そこが最も人間らしくない部分であると、ジンクムは認識している。ただしこれはジンクムが記憶している世界に住まう人々の記憶──故国を築き上げた人々の記憶に基づいた評価であるため、発声してシギロッタに伝達まではしなかった。
此処は額面通りの意味で、住む世界が違っているのだ。そして世界を取り巻く環境も、現象もまるで異なっている。この事実は知覚している以上に、過分ではない衝撃を与えていると言えるのだろう。
南のエリアに関しては、ジンクムも既に探索を追えている。主の言葉に反応を示さなかったのは、別の考えを纏めていた為だ。
あたふたと慌てるシギロッタに対して、ジンクムは内蔵された発声装置を通じて意見を述べる。
この世界の住人が言い出したものではなかった気がする、とシギロッタは思い返した。住人達はそもそもナゾを認知しているのかどうか怪しい。
足で直接手掛かりを拾い集めているものの、協力者からの情報は乏しい。異世界からの訪問者であり、互いに箱に閉じ込められた迷い人という同志である筈だと考えられるものの、そこに信を置かれているのかどうか、そこは判然としない。
閉ざされた世界から脱する術を探すために、世界に変化を起こして可能性を探る。
ジンクムが想定するのは、それによってもたらされる危険性についてだ。自分達の行動如何によって脅威が降りかかるのであれば、阻みたい。
そう告げるジンクムの内には、守護者としての危惧の念が揺らいでいる。
しかし、目の前の主はきっと己とは異なる思念を抱いているのだろう。ジンクムにとっては確証は取れないが、そうではないかという予感はあった。
人が言うところの推察と表せる揺らぎを湛えて、頭部の光に明滅させてシギロッタの返答を待とうとする。けれどもその言葉は想定よりも遥かに早く、自然に会話を受け答えるテンポを以て、彼女の楽し気な口から発される。
判然としない、無鉄砲な仕草であると認識をする。だが、
奔放でありながらも、快活に未知へと邁進する姿はまさしく、ジンクムが長年守り抜いてきた錬金術師の有り様そのものだ。
故にこそ、ジンクムは主の無鉄砲さを否定しない。それは守護者としてなすべき事は、眩く揺蕩う光を護ることにあるのだから。
彼女に向かって、躯体に内蔵される発声器官を介して、ジンクムは響くような重音で言葉を発する。
白昼の陽気に照らされる中、ジンクムは石畳の上に片膝をついて、主に固く宣誓をする。
意思に覆われた守護者の真意は、剥き出しの岩石のように飾り気はない。
往来の真ん中で振る舞う大胆な行為を気にする玩具箱の住人は、やはり誰もいない。
ただ1人、主であるシギロッタだけは戸惑いの仕草を見せている。いつも得意気に錬金術で用いる色のように顔を染めていく。
それでも守護者の偽らざる姿を目して、彼女はどこか嬉し気な様子であったという。
奇妙奇天烈なモノに満ち満ちている地が連なり、謎がもたらす矛盾と日常を送る人々が住まう、箱庭の世界。
四通八達の中央広場より東に伸びゆく大通りは、デカルト通りと名付けられている。
左右に立ち並ぶ商店が掲げる看板には、どれも判別困難な幾何学図形が記されており、パッと見ただけでは区別はまるでつかない。
ただ、見る人からすれば、看板の図形は瞬時に理解できる記号であるらしい。
判然とした態度で目当ての商店へと進んでいく住人達。看板を見て、即座に目的地を定めて歩き出す。
大勢の人々で煩雑としている通りである筈なのに、誰に尋ねるまでもなく、彼等の動きはまるで1つの流れが定着している。
そんな大通りの流れに取り込まれず、露天から隣の露天へと進んでは止まるを繰り返す2人組の姿があった。

雀躍のシギロッタ
「わっ、これって太鼓の玩具? でんでん鳴ってかわいい~!」
「わっ、これって太鼓の玩具? でんでん鳴ってかわいい~!」
1人は軽装な格好をした少女のシギロッタ。
歓喜の声を上げながら、落ち着きのない動きでひっきりなしに陳列された玩具の玩具に飛びついている、快活な錬金術師だ。

堅約のジンクム
「──────」
「──────」
そして彼女に追従しているのは、大人の平均をも越える大きさを誇る、人型ゴーレムのジンクムだ。
岩石をそのまま手足のパーツとして組み合わせた無骨な巨躯は、そこにいるだけで威圧感を放っている。
彼女達は明確な目的を持たず、デカルト通りに並ぶ商店を散策していた。それは迷いなく移動する住人達が織り成す流れを乱す行為に等しいものだと
思えたが、不思議とこの2人組に呼びかける人の姿は誰もいない。

堅約のジンクム
「再確認──通リニオイテ、自発的ニ接触ヲ図ル民ノ姿ハ、無シ」
「再確認──通リニオイテ、自発的ニ接触ヲ図ル民ノ姿ハ、無シ」
ジンクムは石造りの躯体に内蔵された魔力を巡らせて、不明瞭な結論を再び導き出そうとしていた。
ゴーレムであるジンクムの目的は、人の守護である。自らを造り上げた主と同じ存在を、あらゆる脅威から守ることである。
それを遂行する為に故国の人間を守り続け、造物主の血脈に連なる子孫を護るために異世界へと追いかけてきていて、今に至る。

堅約のジンクム
「……………」
「……………」
その目的に関しては一片のズレも抱いていない。そう認識しているからこそジンクムは疑念を抱いていた。自らが収集した情報と記憶を照らし合わせて生じる、差異。異界の尺度とは如何なるものか、絶えず掴みかねている。
そんな中、トントコトコ、と小気味よい小太鼓の音を鳴らしながら、主と定める少女が戻ってきた。

雀躍のシギロッタ
「いや~、こーれはいい買い物ができた~!やっぱり玩具っていいよね~」
「いや~、こーれはいい買い物ができた~!やっぱり玩具っていいよね~」
露天の商品を物色していたシギロッタが、満悦といった様子で棒状の太鼓の物品を振っている。
見慣れぬ形状の代物であるが、この街における玩具の一種のようだ。ジンクムは内蔵されたコアに情報を記憶させる。
同時に魔力による透視を行い、危険性が無いかの判断も遂行する。そして玩具に危険性が無いことを確認し終えると、ジンクムは静かに主の行動を見守り続ける。
そんな間にも、主であるシギロッタは屈託のない調子で話しかけてくる。

雀躍のシギロッタ
「ジンクムはどう、この世界? 玩具がいっぱいあるけど、楽しんでる?」
「ジンクムはどう、この世界? 玩具がいっぱいあるけど、楽しんでる?」

堅約のジンクム
「当個体ハ元ヨリ、マスターノ護衛ヲ遂行スルタメニ行動シテイマス。
異郷ノ地ヲ、観テ触レテ、満チ足リル感情ハ享受シテイマセン」
「当個体ハ元ヨリ、マスターノ護衛ヲ遂行スルタメニ行動シテイマス。
異郷ノ地ヲ、観テ触レテ、満チ足リル感情ハ享受シテイマセン」

雀躍のシギロッタ
「も~ジンクムったら、そんなこと言っちゃって~!そ~いう言う割には、
それなりの頻度であたしの傍からフラ~って離れて、何かしてるじゃん!」
「も~ジンクムったら、そんなこと言っちゃって~!そ~いう言う割には、
それなりの頻度であたしの傍からフラ~って離れて、何かしてるじゃん!」
奔放で落ち着きのない主であるが、同郷のゴーレムを無視するほど無関心な人物ではない。
彼女は頻繁に臆面もなく言葉を投げかけてくる。傍から見れば、寡黙な石像に話しかける妙な少女だ。
けれどそうやって振る舞う姿は、ジンクムの記憶を遡れば初めてではない。

雀躍のシギロッタ
「ね、ね、教えてよ! やっぱりあたしみたいに
この世界を見て回ってるんでしょ!」
「ね、ね、教えてよ! やっぱりあたしみたいに
この世界を見て回ってるんでしょ!」

堅約のジンクム
「ヴォン…当個体ハ同ジ境遇デアル、迷イ人ノ護衛依頼ヲ遂行シテイルト
解答デキマスガ、マスターノ熱望スル解デハナイト、判断……」
「ヴォン…当個体ハ同ジ境遇デアル、迷イ人ノ護衛依頼ヲ遂行シテイルト
解答デキマスガ、マスターノ熱望スル解デハナイト、判断……」
ジンクムは再思考を行う。護衛遂行中に認識した情報の中から、何を提示するべきか。
この街に住まう住人に関して、この街を形作る世界とは如何なるものなのか。己の記憶と知識が内包するのは、己が世界の人の在り様のみ。
故に今のジンクムには、明快に提示できる情報はない。しかし──

雀躍のシギロッタ
「わくわく! わくわく!」
「わくわく! わくわく!」
主は今この場で語ることを、望んでいるとジンクムは理解している。であれば己が内に抱く智見を提示するべきだと判断する。
些か彼女が望む意向とは異なるとも推測できたが。

堅約のジンクム
「──コノ街ノ住人ハ、一律デアルト認識シテオリマス」
「──コノ街ノ住人ハ、一律デアルト認識シテオリマス」

堅約のジンクム
「繰リ返サレル躓キ、失敗、停止。何レモ人ノ世ニオケル営ミニ生ジル妨ゲ。
ソレハ、コノ街ニオイテモ観測済デス。デスガ」
「繰リ返サレル躓キ、失敗、停止。何レモ人ノ世ニオケル営ミニ生ジル妨ゲ。
ソレハ、コノ街ニオイテモ観測済デス。デスガ」

堅約のジンクム
「妨ゲガ発生シタ後ニ訪レル、損失、損害。
ソレラノ訪レルベキ結果ハ、一度タリトモ確認デキテオリマセン」
「妨ゲガ発生シタ後ニ訪レル、損失、損害。
ソレラノ訪レルベキ結果ハ、一度タリトモ確認デキテオリマセン」

雀躍のシギロッタ
「それはアレでしょ!ナゾが人に憑りついちゃってるからでしょ!」
「それはアレでしょ!ナゾが人に憑りついちゃってるからでしょ!」
シギロッタの答えに対し、緩やかな駆動音を立ててジンクムは肯定の意思を示す。人が抱える停滞にナゾが潜り込むことで、
元からそこにあった事態が不明瞭な謎となる。アーティファクト協会の青年が伝えてきた情報を整理すると、そういう言う事になる。
だからこそシギロッタは街の各所に潜むナゾを打ち払い、困っている人達を助けているのだ。お付きのジンクムも、そんな彼女の意思に従って同様の
行為を進めている。そこに相違はない。それを踏まえた上で、ジンクムはメインストリートを行き交う住人達を見据える。

堅約のジンクム
「コノ街ノ住人ハ、謎ヲ、停滞ヲ、自ラノ営ミヲ妨ゲル
事象トハ、認識シテイマセン」
「コノ街ノ住人ハ、謎ヲ、停滞ヲ、自ラノ営ミヲ妨ゲル
事象トハ、認識シテイマセン」
観測できた範囲において、この玩具箱の住人は同じことを繰り返している。だが、そこに大きな支障は生じていない。
満ち溢れるナゾが彼等に停滞をもたらしていても、季節が移ろうような変化が訪れたとしても、彼等は何事もなく同じ問題を繰り返し、躓く日々を繰り返しているのだ。

堅約のジンクム
「コノ現象ガ、イツカラ根付イテイタノカハ、不明デスガ、
ドウデアレ、コノ街ノ住人ハ自ラ変化スル傾向ハ見受ケラレマセン」
「コノ現象ガ、イツカラ根付イテイタノカハ、不明デスガ、
ドウデアレ、コノ街ノ住人ハ自ラ変化スル傾向ハ見受ケラレマセン」

堅約のジンクム
「我々ノ介入ガナケレバ、ココは等シク一様デ不変ノ街。
──現状デハ、ソノヨウニ認識イタシマシタ」
「我々ノ介入ガナケレバ、ココは等シク一様デ不変ノ街。
──現状デハ、ソノヨウニ認識イタシマシタ」
そこが最も人間らしくない部分であると、ジンクムは認識している。ただしこれはジンクムが記憶している世界に住まう人々の記憶──故国を築き上げた人々の記憶に基づいた評価であるため、発声してシギロッタに伝達まではしなかった。
此処は額面通りの意味で、住む世界が違っているのだ。そして世界を取り巻く環境も、現象もまるで異なっている。この事実は知覚している以上に、過分ではない衝撃を与えていると言えるのだろう。

雀躍のシギロッタ
「……なーるほどね~。想像以上にカッチリした感想が出てきて
びっくりしてるけど、言われてみたら……そうかも」
「……なーるほどね~。想像以上にカッチリした感想が出てきて
びっくりしてるけど、言われてみたら……そうかも」

雀躍のシギロッタ
「ナゾについて聞いても、明らかに知りませんっていうか、感じ取れてません
って様子で、まるで玩具の人形っぽい振舞いをする時があるし」
「ナゾについて聞いても、明らかに知りませんっていうか、感じ取れてません
って様子で、まるで玩具の人形っぽい振舞いをする時があるし」

堅約のジンクム
「ヴォン……ナゾガ対象ノ思考ヲ停滞サセルダケニ留マラズ、
謎ヲ維持スルタメニ周辺環境マデ、自身ノ活動域ニシテイル場合、
住人達ハソノ影響ヲ受ケテイル可能性ハアリマス」
「ヴォン……ナゾガ対象ノ思考ヲ停滞サセルダケニ留マラズ、
謎ヲ維持スルタメニ周辺環境マデ、自身ノ活動域ニシテイル場合、
住人達ハソノ影響ヲ受ケテイル可能性ハアリマス」

雀躍のシギロッタ
「可能性はありますって言うか…環境まで謎で変になってる場所って
どっかになかった? 南のほうで」
「可能性はありますって言うか…環境まで謎で変になってる場所って
どっかになかった? 南のほうで」

堅約のジンクム
「…………」
「…………」

雀躍のシギロッタ
「あっ!? ジンクムはまだ行ってないんだっけ!?
ゴメンゴメン!忘れて!?」
「あっ!? ジンクムはまだ行ってないんだっけ!?
ゴメンゴメン!忘れて!?」
南のエリアに関しては、ジンクムも既に探索を追えている。主の言葉に反応を示さなかったのは、別の考えを纏めていた為だ。
あたふたと慌てるシギロッタに対して、ジンクムは内蔵された発声装置を通じて意見を述べる。

堅約のジンクム
「──街ノ住人ト、ナゾ。両者ハ不可分デアリ、
共生関係ニアタル可能性」
「──街ノ住人ト、ナゾ。両者ハ不可分デアリ、
共生関係ニアタル可能性」

雀躍のシギロッタ
「わぁ新説だ! でもナゾに憑かれてる人ってどっかで困って
立ち止まっちゃってたし、良くない状態なんじゃない?」
「わぁ新説だ! でもナゾに憑かれてる人ってどっかで困って
立ち止まっちゃってたし、良くない状態なんじゃない?」

堅約のジンクム
「停滞ガ彼等ノ不利益デアレバ、寄生ト定義サレルデショウ。
デスガ、停滞ヲ享受シテイタ場合ハ、共生関係デアルト言エマス」
「停滞ガ彼等ノ不利益デアレバ、寄生ト定義サレルデショウ。
デスガ、停滞ヲ享受シテイタ場合ハ、共生関係デアルト言エマス」

雀躍のシギロッタ
「相利共生ってやつだね」
「相利共生ってやつだね」

堅約のジンクム
「ソシテ、コノ街ノ住人ハ謎モ、ナゾモ、認識シテイマセン。
我々ノ介入ガ無ケレバ、独自ノ環境ヲ送ッテイタ、デショウ」
「ソシテ、コノ街ノ住人ハ謎モ、ナゾモ、認識シテイマセン。
我々ノ介入ガ無ケレバ、独自ノ環境ヲ送ッテイタ、デショウ」

雀躍のシギロッタ
「そっかぁ~……あたし達が来てなかったら、それはそれで巡ってたんだね。
んん? そういえば、ナゾは人に寄生してるって言ってきたのって……」
「そっかぁ~……あたし達が来てなかったら、それはそれで巡ってたんだね。
んん? そういえば、ナゾは人に寄生してるって言ってきたのって……」
この世界の住人が言い出したものではなかった気がする、とシギロッタは思い返した。住人達はそもそもナゾを認知しているのかどうか怪しい。
足で直接手掛かりを拾い集めているものの、協力者からの情報は乏しい。異世界からの訪問者であり、互いに箱に閉じ込められた迷い人という同志である筈だと考えられるものの、そこに信を置かれているのかどうか、そこは判然としない。

堅約のジンクム
「我々ノ活動ハ、編ミ込マレタ輪ノ糸ヲ解クヨウニ、
世界ニホツレヲ生ミ出シテイマス。」
「我々ノ活動ハ、編ミ込マレタ輪ノ糸ヲ解クヨウニ、
世界ニホツレヲ生ミ出シテイマス。」

堅約のジンクム
「ソレガコノ玩具箱ニドノヨウナ影響ヲ及ボスノカ。
当個体ニハ、予測ガツキマセン」
「ソレガコノ玩具箱ニドノヨウナ影響ヲ及ボスノカ。
当個体ニハ、予測ガツキマセン」
閉ざされた世界から脱する術を探すために、世界に変化を起こして可能性を探る。
ジンクムが想定するのは、それによってもたらされる危険性についてだ。自分達の行動如何によって脅威が降りかかるのであれば、阻みたい。
そう告げるジンクムの内には、守護者としての危惧の念が揺らいでいる。
しかし、目の前の主はきっと己とは異なる思念を抱いているのだろう。ジンクムにとっては確証は取れないが、そうではないかという予感はあった。
人が言うところの推察と表せる揺らぎを湛えて、頭部の光に明滅させてシギロッタの返答を待とうとする。けれどもその言葉は想定よりも遥かに早く、自然に会話を受け答えるテンポを以て、彼女の楽し気な口から発される。

雀躍のシギロッタ
「え~、どうなるかわかんないから、ワクワクするんだよ~!」
「え~、どうなるかわかんないから、ワクワクするんだよ~!」

雀躍のシギロッタ
「何があるのか手ずから確かめて、楽しむんだって!」
「何があるのか手ずから確かめて、楽しむんだって!」
判然としない、無鉄砲な仕草であると認識をする。だが、
奔放でありながらも、快活に未知へと邁進する姿はまさしく、ジンクムが長年守り抜いてきた錬金術師の有り様そのものだ。

堅約のジンクム
「───」
「───」
故にこそ、ジンクムは主の無鉄砲さを否定しない。それは守護者としてなすべき事は、眩く揺蕩う光を護ることにあるのだから。
彼女に向かって、躯体に内蔵される発声器官を介して、ジンクムは響くような重音で言葉を発する。

堅約のジンクム
「謎ノ解明ニアタリ、今後サラナル敵性体ノ出現ガ予想サレマス。同時ニ、
ホツレガ環境ニ及ボス変化ハ、マスターニ影響ヲ与エル恐レモアリマス」
「謎ノ解明ニアタリ、今後サラナル敵性体ノ出現ガ予想サレマス。同時ニ、
ホツレガ環境ニ及ボス変化ハ、マスターニ影響ヲ与エル恐レモアリマス」

堅約のジンクム
「デアレバコソ、当個体ノ目的ハ元ヨリヒトツ」
「デアレバコソ、当個体ノ目的ハ元ヨリヒトツ」
白昼の陽気に照らされる中、ジンクムは石畳の上に片膝をついて、主に固く宣誓をする。

堅約のジンクム
「護リマショウ、アナタ様ヲ」
「護リマショウ、アナタ様ヲ」
意思に覆われた守護者の真意は、剥き出しの岩石のように飾り気はない。
往来の真ん中で振る舞う大胆な行為を気にする玩具箱の住人は、やはり誰もいない。

雀躍のシギロッタ
「も、も~っ!? だからそんなにカッチリした態度は
取らなくていいのに~っ!!!」
「も、も~っ!? だからそんなにカッチリした態度は
取らなくていいのに~っ!!!」
ただ1人、主であるシギロッタだけは戸惑いの仕草を見せている。いつも得意気に錬金術で用いる色のように顔を染めていく。
それでも守護者の偽らざる姿を目して、彼女はどこか嬉し気な様子であったという。