Eno.346 藍堂  ある男の手記② - トイランブル

几帳面で神経質そうな文字が並んでいる。



この一年程で、判った事が幾つかある。

睡眠、食事。その他諸々の欲求に変化は無い。
恐らくまだ、この身体はそれらを必要としている。
断ってみる気にはなれないでいる。

痕跡は、一点を残して全て消えた。
少なくとも、この身体からは。
検査をしても、何の異常も見つからなかった。
呼吸、脈拍、血圧、体温。全て正常範囲内だと。
正常である事が異常だというのに

あの路地へと行ってみた。
黒々とした血痕が残っていた。
医学の知識が無くとも、致死量だと判る程度の。
流石に、二度と足を運ぶ気にはなれない。

夢でも、幻でもない。
あの日確かに穴が開いた筈の心臓は、今も変わらず動いている。








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