Eno.178 白飴兎ナイタン  記録①:まいごのしろうさぎ - トイランブル

キャンディうさぎさんことナイタンには、この町に来るまでの記憶がありません。
ぼんやりと覚えているのは、少しのことだけです。

傘の持ち手に書かれた"Naitangナイタン"が、自分の名前であること。
自分がミルクキャンディのうさぎさんであること。
自分の使命は、誰かの悲しみに寄り添い、悲しまないよう守ること。

その他は、どこから来たのか、何をしていたのか、てんで覚えていませんでした。

ナイタンは、泣き虫なうさぎさんです。
共感性が高く、すぐもらい泣きしてしまったりします。
けれど、弱虫ではありません。危険にも勇気を持って立ち向かいます。

ナイタンは、時々夢を見ます。
誰かと一緒におやつを食べた夢を見ます。
誰かと一緒に楽しくおしゃべりをした夢を見ます。
誰かと一緒に空を飛んだ夢を見ます。
誰かと一緒に傷を手当てした夢を見ます。

けれど、時々……ナイタンは、自分が怪物になった夢を見ます。
何もかもを憎悪して、世界を壊そうとする、そんな怪物になった夢。
これは本当に夢なのでしょうか。もしかして、記憶なのでしょうか。
もしこれが本当にあったことなら、と思うと、ナイタンは泣きそうになります。

けれど、自分の使命を思い出します。
誰かの悲しみに寄り添い、悲しまないよう守ること。
こっちの方が、ずっと確かな記憶です。

ナイタンはキャンディうさぎさんです。
ミルクキャンディでできていて、泣き虫で、柔らかく溶けやすく、優しい甘さのうさぎさんです。
今日も、悲しんでいる人がいないかパトロールをします。
心が晴れて、虹がかかるまで、傘をさしにいくために。








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