Eno.175 シャウル・レフォルマーレ  Ⅳ.独白2 - おだやかな草原

父さんが亡くなり莫大な遺産が転がり込み
母さんが実質の権力を握るようになった後
姉さんは屋敷から姿を消した

母さんに問い詰めてもはぐらかされたけれど
後日に母さんは僕が居ないと思ったのか電話でぺらぺらと明かしてくれた

"遺産相続や後継者の資格を有する者として邪魔になった妾の子を軍に売った"って
"ざまあみろ"って
母さんは確かに言ったんだ

その日から僕は母さん、否…あの女に対して見る目を変えた
人ではなく醜悪なものとして
けれど僕は其を隠し、あの女の望むような後継者となろうと思い至ったんだ

だって
僕から大事なものを奪ったこの女を幸福にしてから全て奪ってしまえば絶望の底に叩き落としてやれるじゃないか
そう思ったら後はもう走る道は定まったも同然で

僕は必死に勉強した
学力だけでなく交流からマナーと全てに於いて
恥とならないよう全力であの女が抱いた"理想の後継者"として振る舞った


そうして歳月は流れて
僕が成人して家督を継いだ日に僕は家長権限を以てあの女を勘当した
当然、あの女は反対するだろうからその前に1つ、僕はあの女の忌々しい手を取り異能をこっそりと行使しておいた上で

シャウル
「僕の異能は"触れたものをバラバラに分解する"……嗚呼、殺めてなんかいないさ」


シャウル
只、あの女が今まで得た"繋がり"…縁とかだね、それをバラバラにしてやった、それだけだよ


勘当されたあの女は側近達によって追い出された
それから一年くらいか、ある街の路地裏にてみすぼらしく変わり果てた姿で息絶えていたらしい
きっと誰からも手を差し伸べられる事もなく孤独の中で

それを知った僕は心の底からざまあみろと、そう思った
其れと同時に自らの醜悪さに反吐が出る程に嫌気を差した
結局の所、僕もまたあの醜悪な女の血を引いた子だという事実を再確認したんだ

後は家も売り払い、金も最低限以外は寄付して
最低限の金とこの世界の招待状と知らずにポケットに入れていた一通の手紙
それ以外は何もない状態で歩いてたら此処に来たってお話さ



僕は復讐を終わらせた、そして此れから全てを終わらせる…姉さんを守れなかった自らの無力さとあの女と同じ血が流れているという嫌悪感に終止符を打ちたいんだ
それが、僕がこうして観光と称して死場所を探してる理由だ








<< 戻る