Eno.330 ドド    - はじまりの場所

ソラニワの世界この世界から変わって都市国家観世かんぜ
チリン、チリンと髪飾りを揺らし歓世かんぜのシンボルにもなっている霧雲魔石庁きぐもませきちょうへとやってきた。
受付を済ませ、政策策定局せいさくさくていきょく菊魔石術師きくませきじゅつしの部屋に向かう。
コンコンとノックをし、ドアを開ける。
「やほー、約束通りに来たヨ」
「数分おくれてますけど……ま、いいか!どうぞ、今色々出しますんで」
そう迎えてくれたのは菊魔石術師きくませきじゅつし所属の鳴瀬 明輝なるせ あきらだ。
顔を隠している男が2人。はたから見たら怪しい取引のようにも見える。
「あれ、■■さんまーた身長伸びました?」
「おっ?わかった?わかった?今ね、190cm」
ピースピースとする。生きてる限り成長期とも付け加えて。
「成長期って何歳なんだよ……」
「多分、明輝クンよりは年上だと思うけど……わかんない」
「いいねぇ……見た目が若い子みたいで……」
この前、見回りをしていたら子どもにおじさんと言われたことを思い出し、しょぼんとなる鳴瀬32歳
「アッハッハッ!ごめんネェ!伝承によれば半分ばかり神々の血を引いてるらしいから老いることとかは緩やかで!」
「くそっ……この白角の民め……そんなことは置いときましょう、お兄さんが悲しくなる。本題だ本題」
カシュッと心地良い音を立てて鳴瀬の左腕が外れる。どうやら義手の調整のようだ。
「あんまり歪んでないとは思うけど、なんかあったら困るしな」
「そのなんかあって腕1本吹き飛んだんでしょ?」
歪みがないか、魔石はちゃんと反応しているかを見ながらそう返す。いや〜必要な犠牲だったということでと返される。
「犠牲って……まあ……うん。キミのおかげで医療系魔石の使い方、安定性は増してきたからありがたいけどネー、体は大事にして欲しいネー」
布越しに睨まれている気がする。何も言い返せない。
自分のしている仮面を触りつつこちらも見返す。
「……この技術、もう少し前にあったらなー、良かったなー」
そう言いながら左右にゆらゆらと揺れ始める。

チリン。チリン。

「そういえば、その髪飾りの鈴ってなに?ずっと前から気になってたけど」
「あー?これ?魔よけ魔よけ。神々が白角の民第1世にあげたやつの名残みたいな」
みんなつけてるから、何かあった時とか忙しい時めちゃくちゃチリンチリンなってうるさいのよネーと。
「それは確かにうるさそう。耳に残りそう」
「実際残る。昔数ヶ月ぐらい聞きたくなくて外してたもん」
チリンという音と共に当時の記憶が蘇るらしい。自分は戒めとしてまたつけたとも言う。
「向き合うって大丈夫よネ……まあ……出来ない人の方が多いか」
「やめてくださいよぉ、その手の話は俺にも刺さるんで……」
仮面を覆う。自分はまだおそらく向き合えてないと思うから。
「いや別に明輝クンに対して言った……訳でもないけど流れ弾当てちゃったか〜」
「そうですよ流れ弾ですよ。ほら早く済ませてくださいよ!まだここにも調整して欲しいのとかあるんで」
はぁいと返事をすると共に、髪飾りがチリンと揺れた。








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