Eno.220 水縹 あおくてあまい - くらやみの森
「ふふっ、ふふふ」
受け取った花を見て、ほわ。と笑顔がこぼれる。
そうしたくて、と手渡すあなたを思い返し胸の奥がぽかぽかとあたたかくなる。
きっといつも以上にゆるんだ顔をしているに違いない。
嬉しくてあたたかな気持ちになるのは、その花の色が好きだったからだけじゃなくて。
あなたと育てた思い出、その色を好きだと話した思い出がちゃんとそこにあるから。
土を整え、水を撒き、手を加え。
よく育てと花達に声を掛ける姿。
その一つ一つの所作がこの花を通じてありありと思い返されるのだ。
「ずっと見ているのもいいですが、このまま枯れてしまうのも少し寂しいですね…」
自然の流れとともに終わりゆく姿もそれはそれで美しいものではあるけれど。
うーんと頭をひとつ捻っていると、先日河原で火を囲んで食事をした癒し手の若者との会話を思い出す。
これもまた楽しい思い出。
「……ふむ」
「アリスが癒し、フロスが氷、エノメナが風、ジオティアは魔術……いけるんじゃないでしょうか?」
「茎と葉を煎じて、花弁は先に色水を絞って…」
「トウキビと果実の汁で味を整えたら……」
「……よし!」
【涼風粒糖菓(りょうふうりゅうとうか)】
アリス
エノメナ
フロス
ジオティア 各1本
オレンジ 2個
ぶどう 1房
リンゴ 1個
茶葉 10g
サトウキビ 2本
紫や水色に輝く透き通ったドロップ。
舌の上で転がすとひんやりとした風が通り抜けるような清涼感と果実由来の甘みが口と喉に広がる。
痛めた喉の鎮痛効果や、多少だが魔力の回復効果などが見込めるだろう。
透明はりんご味、水色はオレンジ味、紫色はぶどう味、濃い青はお茶味だ。
箱に冷ましたドロップを小分けにしつつ、一つの箱には
もう一つの箱には同じようにちょっとへろへろな芽の絵を描いて。
「コノギさんは何味が好きですかねぇ…ふふ」