Eno.254 魔導素材飛行型 ウォラーレ  記録:めざめの平原、捜索開始 - めざめの平原

やはりあの平原の貝殻もまたシェルだった。
が、ハナコの声が聞こえてきたのは手元のシェルだったようだ。
どうにも想定外の超技術を前に混乱してしまっていたようで、今後の遠距離飛行でも同じ轍を踏まないようにしなければ。

平原にあったシェルは『マスターシェル』というもので、手持ちのシェルと連携させることでいつでも『マスターシェル』のところに瞬間移動できるという。
僕の転送魔法陣と同じような仕組みなのだろうか、とはいえやはりシェル一つにやたらと高機能な技術が集約されており恐ろしさすらある。

そもそもハナコの話が正しければマスターシェルは「移動用に設置されたもの」らしいのでこの辺りの浮島は過去に放棄されたもので、完全な未開の土地ではないのかもしれない。

ともあれこのめざめの平原を探索することになったのだが、その前に捜索が始まることになった。
これを記録するにあたり先に説明しなければならないことがあるが、性能検証しに訪れたすぐに行きずりで面倒を見ることになった小動物のような植物のような生物の面倒を見ることになったのだ。
紫色の細長いビートルートが奇形で人型になったような出で立ちというと凡そ合っているだろうか。
ただ、完全な人型というわけではなく頭と胴体の境はあいまいでおおよそ2頭身、小動物のような小さい目鼻が愛らしい。
個人的には動物なのか植物なのか、はたまたその中間種として確立した存在なのかが興味あるが、ご主人は多分この小柄な生き物をそのまま愛でたくなりそうだ。
最終的に持ち帰っていいものかわからないが、種を植えて繁殖するのであれば種を採取して持ち帰ってみたい。

さて、捜索のことだが、この不思議生物が勝手に平原に飛び出していったのだ。
ざっと見たところ捕食しそうな生物はいなかったが、万が一はあるのでさっさと見つけだしたい。


ウォラーレ
「そういやなんかポーチの番石から魔力の反応が……陣、開けてみるっすかね」


デヴォート
「やほやほ! 元気にし―――」


ウォラーレ
「わー、わー、わー!! ご主人、まずは両手を口に当てて僕の質問に頷くか首を振るかでコミュニケーションっす!」


デヴォート
「えー、やだぁ なんで僕そんな変なことしなきゃいけないの?」


ウォラーレ
「そりゃ一番自制心がないからっすよ、何口にするかわかんない子はダメだって話だったっすよね?」


デヴォート
「僕が創った子たちの中でだれを向かわせるかって話であって僕に当てはめる話じゃないもん! というかちょっと材料汲み取りに来ただけだもん、ほら尻尾のさきっちょこっちにちょーだい!」


ウォラーレ
「お弁当ドカ食いとかしてないっすからそんな余ってたりしないっすよー、取っていい分だけこっちで分けるんで、この瓶の中に入れるっすっからね?」


デヴォート
「はぁーい じゃあそれしながらで聞いててほしいけど、あのねあのね、そのうちだれかそっちに遊びに行ったりするかもだから、後で追加の寝袋とか送るね」


ウォラーレ
「またまたー、別にいいっすけど絶対僕以外は陣の塗りつぶし魔法に引っかかるっしょ、そんなのびのびはできないっすよー、はいこれ」


デヴォート
「外に出ることが重要なんだよー、瓶ありがとね! また今度ねー、じゃっ!」


ウォラーレ
「はーい、ばいばいっすー」


ウォラーレ
「……」


ウォラーレ
「あのちっちゃい動物植物が近くにいたら問答無用で連れ去られてたかもっすねー、偶々はぐれててよかったかも?」









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