Eno.33 半分屋のグレゴリー  2:pretend - くらやみの森



あの小さな木組みの窓から見える黒煙を眺めては、いつか乗ってみたいと思うのです。



グレゴリーが物心ついた頃には、グレゴリーは外出を許されなくなっていました。
両親はきっと恥ずかしかったのです。自分達に微塵も似ていないどころか──
まるで悪魔のような角と尾を持つグレゴリーが。ただ、恥ずかしかったのです。
そうであれば良いと思っているのです。

ですからグレゴリーは日がな1日、
元来虚弱な足で部屋中を歩き回ったり、
壁の木目を数えたり、うつ伏せで眠ったり、
美しい未来や世界を妄想したり。
そういった事をして、時間を潰しておりました。

父はグレゴリーが相当不気味だったのか、
家の中で偶然すれ違うだけで柔らかい腹を蹴り飛ばしたりするので嫌いでした。
母はやはり腹を痛めて産んだという認識のせいか父よりはマシでしたが、
それでもキッチンの生ゴミに群がる虫を見るような視線はやはり嫌いでした。
そしてそんな2人が言い争う醜い声が、恐らく1番嫌いでした。

嫌いでした。

グレゴリーの狭いあの木造二階建の世界は、そればかりを繰り返しておりました。









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