Eno.663 ジオグリス=エーレンベルク  かわいそうに - ほしふる洞窟


「……増幅、信号、障壁、………補助類より前に汎用、
 発動が確認できたら別種の方の……」


人間以外・・・・に使わせた例が存在しない。
理論上は可能。発動に必要な全ては筆に詰められているのだから。
考える頭、言葉を理解できる知能、羽根を持つことができ、文字の書ける力、片腕、指。
揃っていれば誰だって、何、だって。


検証。
どこまで知が落ちても発火条件を満たせるか。
自分のランドラには無理だった。ただの模倣では対応しきれない。
下限が判れば。



「〈支配ドミネイト〉……、」


ああ気持ちわりい、


……そこまで、外道に堕ちるつもりはねえぞ


既にかなり道を踏み外している。
別に俺が外れる分にはいい。歩き続けられるなら。

物は物でしかないのならと頭が理解して認識してしまった。
もうそれを覆すのは難しい。
けれども感情が認めてくれない。ひとであってほしい。
それが叶う可能性があったとして、俺が全部潰した。

救われてほしいと願うくせ、丹念に壊して磨り潰していく。

理不尽。暴力。上位存在の自由。

自分だけの都合で、拒むことのできない下の存在を好きにして。
未来を摘み取って、振り回して、逃れられなくして、

そんなの。


そんなのあのバケモンと何が違う!


距離を選ぶのは上側の役目。見誤って今に至る。
上でいるしかないのならと圧し殺した結果、怪物に成り果てたわけだ。

バカがよ。

もう幻覚を見ることはない。
道を舗装するための都合のいいまぼろしが現れることなどないだろう。

だって視線は!青い瞳は!現実にありますもの!

ああ神様ありがとうございます!
なんて素敵な贈り物!


「けほッ、げほ、ぉえ、え"ッ、」


こんなものいらなかった。


欲しかったのは。








<< 戻る