Eno.322 恋路 六六  【記録】双魚の記憶④ - いろどりの山道

私の鱗の剥がれた痕は、
どういう訳か、人に化けた後も消えなかった。
腕に残る爛れた色は、かつての敗北の烙印だ。

もちろん、
あの道士の手にかからなかった端午に、その印はない。
私は自分の妹が、あの苦痛を味わわなかった事に心底安心した。



「これ……一体、何が……」


ある日、採集からあばら屋に帰った私は、色を失った。

床には私のものよりも、いくらか小さい鱗がたくさん散らばっていて、
その中心には端午が座っていた。

そして、私の姿を見た妹は、嬉しそうに笑って。

見て。
 これでお姉ちゃんとお揃いだね


そう言って、爛れたように赤い両腕を、私に誇って見せた。








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