Eno.113 メリジェ  13:父からの手紙 - まぼろしの森林

勇者と魔王。
ふたりの生命の理から外れたヒトたちが、
メリジェの世界の歴史を動かしてきた。

でも、きっかけは誰も悪いわけじゃなかった。
文明を持って繁栄したヒューマンも、世界を闇に覆った夜の王も。
色々あったけど、きっとだからこそ、今昼と夜は交互にやって来ている。

この今の平和が、今までよりずっと。
とっても尊いものに思えた。


「聞いてよかったあ。
 流石にどんなお約束をしたのかは、
 誰も知らなかったけど〜」


「お祭りに勇者さまが来るらしいし、
 本人に直接聞いてみようかなあ」


「そういえば、プレゼント……
 どうしよお、まだ決まってないよお〜」


そこへ紙飛行機が届く。
精霊が、『急ぎ!』とでも言いたげに、メリジェをつつく。


「えっ、いったいどおしたのお……?」




メリジェ

急にすまない。

祭りの準備中に、少しやっかいなことが起きた。
この森に向かっていた勇者との連絡が途絶えたと……。
最後に連絡があったのは、夜の眷属の街が近くにある場所だったらしい。
もし夜の眷属絡みのトラブルだったら、と森は急にピリピリしている……。

これから、母さんと俺はその捜索に行く。
だから手紙を貰っても、返事を書くことができないかもしれない。

母さんはお前には言うなと言っていたが、
手紙が繋がらなくて心配させるわけにはいかないから。

メリジェ、旅行先からお前にできることは少ない。
気にするなというのは難しいかもしれないが。
父さんや母さんなら、大丈夫だ。

オークのアイオン





ぱたり。取り落とした手紙が、地面へ。
不安が再び顔を出す。
足がすくむ。

もし、再び争いがはじまったら。
昼と夜が、仲良く暮らせなくなったら。
……考えることすら、怖い。

ここからできることは少ない。それはその通りで。
今は、両親を信じるしか。








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