Eno.132 レイン  五翼 - まぼろしの森林

**どう見たって鴉は黒だが白と合わせる事にあきらめがある**

**4年だ**
**俺がその団体に身を置いていた時期**
**親がああなもんで、子供である俺もまあ、なし崩しに**
**表向き従順だったのがよくなかったかな**
**きな臭いそのカルトは、いざ身を浸してみればフィクションも真っ青な反社的組織だった**


レイン
「俺は未成年で世間体もあって、表向きは普通に中学は通いきったよ。高校には行けなかった。学びは大体別の信者からの受け売りだ」


**でも誰もかれもが、ただの犯罪者じゃなかった**
**確かに彼らには大義があった、現実でないものを信じるに足る根拠があった**
**神というものの存在を信じるだけの理由があった**
**頭はおかしかったし、やってる事も最悪だったけど、連中にはタチの悪い事に確かに信仰心はあったんだ**
**俺の刺青がその証の一つだ**


レイン
「理屈はワカラン。刺青のインクに使われている鉱石が重要で魂に接続し神の御威光を借りれる……みたいなそんな感じ。後天的な異能代行能力を獲得する……らしい。俺にはさっぱりだが、刺青を回路に見立てて、魔力を流すとかになるんだろうな。ここで通じる説明だと」



**呪術シャーマン的な要素なのかも**
**刺青を通して、神に訴えかけるっていうとそっちの方が近い気が俺はする**
**便宜上魔術回路とか適当言ってるけどね、正しい言葉を俺がわかっていないんだ**
**俺がこれを全身に彫る事になったのは、偏にそこの幹部様のごひいきがあったからだ**
**そもそも親父はそのツラの良さで上の連中に気に入られてたからな、その息子で親譲りに顔の良い俺はウケがよかったんだろう**
**刺青の痛みは凄まじかったし、痛みによる飼いならしがあったのは否めない**
**刺青は罰でなく報酬で、寵愛だ**
**耐えきれば過保護なママが坊ちゃんにほおずりするように褒められるから、ゆるゆると自分の中の常識やら倫理観やらが根腐れしていくのを感じていたのを覚えている**
**少なくとも連中に従って神様に縋っていれば、多少気持ちは救われる**
**神様に縋っていれば、多少お目こぼしで唯一隠し持っていた祖父のレシピノートや、料理の練習くらいは許してもらえてたからさ***

**屈したよ、なにもかもに**

レイン
「スノウと会ったのは大体、背中をいれ終った後かな」


**俺はアレがどうして連れてこられたなんて知らなかったし**
**俺と同じように信者の親に引きずられてきたんだと思っていた**
**実際にはもう少し酷い扱いだったし、アレの能力について、上手く躾ようとしてただけなんだと知ったのはもう少し後だけど**


レイン
「綺麗な子だと思ったよ」


**恋とか愛とか言うにはあまりにも愚か過ぎたけど**
**あの時確かに、俺はあいつに遠くから憧れを抱いていたよ**
**ただ、俺達はそんな関係汚いものじゃない**
**親友で相棒だ、どこまで言ってもそれ以上にはならないし、今はもうそうなりたいとも思わない**


**ま、そもそも俺にそんな権利はなかったし**
**俺は今でもあいつを傷つける事しかできないのだけど**








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