Eno.494 運送屋  小休憩 - くらやみの森

 朝起きると、君は眠そうに朝の支度をし、餌を食べる。
 朝は強い方ではない様だが、まあまあ規則正しく9時頃に起きる。

 それから、大きな鉄の車──トラックと言うらしい──を駆って探索へ出掛ける。
 途中、何か気になる物があればその辺りを漁っている。
 私が好きな土も探しているらしく、殊勝である。
 水場を見つければ私を洗って、タオルで拭く。少し荒っぽいが、まあ許そう。

 探索中に野生の動物や魔物に襲われた時は、うわあなんて言いつつもしっかり倒している。
 最近は私の底力に気付いたらしく、良く手伝いを求めて来る。
 少し面倒だが、守ってやる。
 弱くて脆く可愛い人間に万が一の事があったらいけない。

 帰ったら、いつもの森の拠点でのんびりしたり、他の場所へ散歩に行ったりして時間を潰す。
 時々君の知り合いから土を詰められる。何故かは分からないが美味しいから良し。
 それから、君は煙草が好きらしく、1日に3、4回くらい吸っている。
 煙たいので私はあまり好きではないのだが。

 夜が来るとまた探索に出掛けて、帰ったら拠点でゆっくりしている事が多い。
 夕食はサバトだとか言いながら火で餌を加工して食べている時もある。
 普通に料理するのと何が違うんだと思うが、まあ言い方を変えるだけで気分が上がるのだろう。

 君は大体私を連れて歩くので、君との時間を一番長く過ごしているのは屹度私だ。
 だから、私は君が色々な名前で呼ばれているのを見ている。
 運送屋、ミュール、箱部、騎手、運転手、運び屋メーネレ、ミスター23歳……全てが君の名前だ。
 君はそれを受け入れる。相手が呼び易い名前を良しとしているのだろう。

 私に『ナマモノ』のラベルを貼り付けて、そのままの名前で呼んでいる様に。
 君は自分の名前も、単なる社会に於ける識別子ラベルとしか認識していないのだ。



なまもの
「ドラ〜」









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