Eno.125 食■世界オブスキュラ  オブスキュラ - くらやみの森

一度口にしてしまえば隠していた事を言うのは容易い。
だけど音になった瞬間、自分の全てが痛みだす。
心も、体も、悲鳴を上げたがって、劣等感、コンプレックスまでもが刺激される。

捕食者の都合のいいように作られ、心臓を与えられた。
知能も感情もあるのに人ではないとされて、生き物に近いのに種を残す事は許されず。
いい匂いは食欲を促すスパイス。葡萄?ベリー?チョコレート?とにかく甘くて心地よくなる味わい。
生き物と同じ赤い血はきっとストロベリー。ジュースみたいに飲めてしまう。
存在自体がフルコース、肌も肉も髪も内臓も唾液だって、全部が。

世界の仕組みが、常識が、理が許せない。




ハイネ
結局金儲けしたかっただけだろうが!


ハイネ
「何が治安維持のためだ、何が人間の保護だ」


 
「勝手に体を弄ってこんな、体にしやがって」













【新種について】
度重なる品種改良の結果、パペットが突然変異する可能性が浮上した。
現時点での推測では以下の特徴が出るとされている。
・一部感情の機能不全
・パペットより平均以下の能力
・家畜本能が強い
・性感の発達

以上、食用に特化した変異が予想される。
牧場内でそれらしき個体を見つけた場合は殺さず確保すること。










涙が流せないんだ貴重性

皆はもっと力があるらしい従属性

死の危険に興奮したりしないらしいエンターテイメント

パペットは気持ちいいに疎いらしい倒錯した娯楽




羨ましい。生きてる奴らが羨ましい憎い
予定調和じゃない人生が、必死に生きられることが。
悲しい時は涙を流せることだって、憎悪が混じらない愛を伝えられることも。
狡い。





どうしようもない。
俺の特徴も、個性も、全部が予想されていたもの。
おかしいと思ったことはすべて食を楽しませる機能。

抜け出せない、抜けられない、暗い部屋にいる。
あの世界が箱庭なんじゃない、もっと近くにあったんだ。




ハイネ
俺は、









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