Eno.599 吠え声  仮 - くらやみの森



――『貴方も言葉を忘れてしまったんですか?』

逆だった。

『人の言葉の方が良いのですね、また僕が言葉を忘れない限りはこちらでお話しましょう!』

存在する≠。





改めて。

自己というものを認識した時から子供は独りだった。
まるで放り出されたみたいにぬかるみに横たわっていた身体を、ない腕の代わりに抱き起こす誰かはいなかった。

そんなものを求める言葉は出なかった。

それではと起き上がって歩いてみれば、同じ耳と尾を持つものはいないらしいことに気づいた。

言葉もまた。

会話を成せないことを知った。


独りだった。




それでは、

ずっと頭の中にいるのは誰。

どうして人の言葉を理解できるのだろう。          どうして獣の言葉は理解できないのだろう。
全ての文字を読めるのだろう。               何一つ意味が分からないのだろう。

理解できるから、                     理解できないから、


この違和感は誰。



名前存在のないのまま。
それ以外、








「……」




「……~」





矛盾がある。誰かが頭の中で叫んでいる。
喉が引き攣る。








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