Eno.113 メリジェ  12:町長からの手紙 - ひかりの森



昼と夜の愛し子、メリジェへ

旅行は楽しくやってるかね。
森の皆がお主のことを気にかけておるよ。
お祭りの準備も進んで、普段は少ないヒューマンたちも集もうてきた。
今年は1番の賑わいになるじゃろう。
メリジェの大好きなお菓子の屋台も、たくさん出ると思うぞい。

さて、質問には答えなくてはだが。
ふぉっふぉっふぉっ、もうそんなことが気になる歳になったのかい。
世界が闇に覆われた理由、つまり魔王のことについて。
聞いて夜眠れなくなっても知らんぞ?
ふぉふぉ、冗談じゃよ。

竜の身ではペンが握れん。
精霊に代筆してもらうが、疲れさせないようにできるだけ簡潔にまとめるとしよう。



魔王とは、永遠の命を持ち世界の夜を統べる者じゃ。
魔王は、昼の間はこの世界に存在しない。
しかし全ての夜に現れることができる。
夜と眠りと月と星、それらは全て魔王の隣人じゃ。

メリジェは精霊を連れておるじゃろう。
魔王は、姿を持つ闇の大精霊のようなものじゃ。
ちっとは想像がつくとよいがのう。

そして全ての夜を使って、この世の全てを記録する使命を持った者でもある。
魔王はそのために魔王城という大図書館で、
夜毎夜毎に執筆を行うておる。

しかし、ヒューマンをはじめとする、繁栄の種族が現れてから、必要な記録がどんどん増えてしもうた。
一晩の内容が一晩では間に合わなくなり、
仕方なく夜の眷属を手伝いのため生み出したが、それらはあまり司書の仕事に向いてなかったみたいでのう。
苦渋の決断として、魔王は夜を延ばしたのじゃ。

そして生命が増えると同時に、必要な仕事は積み重なっていく。
夜はどんどん延びていき、世界は闇に覆われてしもうた。
そして夜の眷属も各地でヒューマンたちを襲うようになった……。

ので、ヒューマンやエルフなどの昼の眷属たちは、ずっと魔王城に使者を派遣していたのじゃ。
それが勇者じゃな。母親から聞いとろう?
勇者が魔王とどんな協約を結んだかは、わしにもわからん。
しかし1000年前に、この交渉は成功したのじゃ。

最近は魔王とは連絡取れてなくてのお〜。
奴は肝心なところを教えてくれなんだ。
まあしかし、昼をやったということは、仕事がなんとかなったんじゃないのかのう。

懐かしいのう。
昔はここはわしの山じゃったんだが。
オキニの財宝を抱えて縄張りにしておったら、勇者御一行が通りがかってな。
ボコボコにされた上、聖剣持って行かれたわい。今でもちょっと許してはないんじゃぞ。

じゃが、昼がやってくるようになって、
ここは夜の土地と昼の土地の境で、交易路になると言い渡されてしもうてな。
ならと思い切って財宝を売り払って、代わりにヒトが住めるように整備したのじゃ。
木々もわしが植えたんじゃよ。
樹齢1000年もない若木ばかりじゃが、立派な森になった。

お主の母親が来たのは500年ほど前かのう。
ちゃんと昔のことを謝ってくれたぞい。
父親は、ヒューマンの街から流れ着いたようでな。
奴と会ってる時のユグネラは愉快なものじゃった。オークらしくない、誠実な男よ。
100年前は盛り上がったのお〜。
公開プロポーズなんてそうそう見れるもんじゃないわい。ラブじゃのう。

メリジェ。
これで参考になったかのう。
“昼と夜が平等な森”は、わしの誇れる、素晴らしい町じゃが。
メリジェにとってもそうであってほしいと願っているぞい。

プレゼントのことは内緒にしてやるから、いいのを見つけてあげるんじゃぞ。
爺も楽しみにしておるでな。

“昼と夜が平等な森”町長
グリーンドラゴンのソロルより








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