Eno.405 逆さの魔女マサカマ 【補遺】トルツメ トルアキ トルママ - くらやみの森
補遺として記す。
稀覯本の棚の一つを眺めていた助手は一冊の本を指してそう言った。
安楽椅子に腰かけた探偵は大儀そうにその棚を見やった。
助手は釈然としないながらも本を開いた。
本の中身は読める状態で並んでいた、中身を基準として本を置くと、表紙が逆さになる本だった。
でたらめに乱れた製本がそのありふれた本の価値となった。
その日、逆さは価値ある物となった。
銀の剣を掲げ、血の道を記す。
銀のペン先は赤い取り消し線と、指示を付けた。
世界 の文字数制限は誤字脱字を許さず、曖昧で間違った表現も許さない。
トルツメ トルアキ トルママ ルビ ひらく とじる
あっちに移動、ここは取る、1マス下げて、字を直して
校正される原稿は魔法書のように赤く彩られた。
校正 はいつでも印刷 から始まる。
おわり
助手
「……あっ!
先生……この本、逆さに入ってますよ!」
「……あっ!
先生……この本、逆さに入ってますよ!」
稀覯本の棚の一つを眺めていた助手は一冊の本を指してそう言った。
安楽椅子に腰かけた探偵は大儀そうにその棚を見やった。
探偵
「それはそのままで合ってる」
「それはそのままで合ってる」
助手
「ええ、でも逆さじゃないですか……、整理しませんか」
「ええ、でも逆さじゃないですか……、整理しませんか」
探偵
「開いて見ろ、読めるだろ」
「開いて見ろ、読めるだろ」
助手は釈然としないながらも本を開いた。
本の中身は読める状態で並んでいた、中身を基準として本を置くと、表紙が逆さになる本だった。
助手
「なんでこんな形に?乱丁……いや、製本ミスじゃないですか。
そもそもこんなありふれた本を稀覯本の棚に入れないでくださいよ」
「なんでこんな形に?乱丁……いや、製本ミスじゃないですか。
そもそもこんなありふれた本を稀覯本の棚に入れないでくださいよ」
探偵
「初版本なんだ。初版本は全てそうなった、だから貴重なんだ。
当時は相当な値が付いたんだよ」
「初版本なんだ。初版本は全てそうなった、だから貴重なんだ。
当時は相当な値が付いたんだよ」
助手
「貴重な物なら煙草の火は消してください」
「貴重な物なら煙草の火は消してください」
探偵
「やだ」
「やだ」
でたらめに乱れた製本がそのありふれた本の価値となった。
その日、逆さは価値ある物となった。
銀の剣を掲げ、血の道を記す。
銀のペン先は赤い取り消し線と、指示を付けた。
トルツメ トルアキ トルママ ルビ ひらく とじる
あっちに移動、ここは取る、1マス下げて、字を直して
校正される原稿は魔法書のように赤く彩られた。
おわり