Eno.357 キョク とある塔の日々1 - めざめの平原
クローヴァル
「……あー……くそ……今日は一段と……」
「……あー……くそ……今日は一段と……」
具合が悪い。
雨音がうるさいせいだ。
風が窓で滞っているせいだ。
囁くような音は、俺のいかれた耳に纏わりつくように響く。
……動悸がしてきた。心音ってのはますます悪循環なんだ。
もうこうなったら、さっさと耳を塞いで寝ちまうしか——
ちょうちょ
「おじさまーーーーー!」
「おじさまーーーーー!」
クローヴァル
「ぎゃあ!!
急にでかい声出すんじゃねえ!」
「ぎゃあ!!
急にでかい声出すんじゃねえ!」
ちょうちょ
「ごめんなさい!
でも、ご本をよんでほしいのよ!
その方が、おじさまも気がまぎれると思うわ!」
「ごめんなさい!
でも、ご本をよんでほしいのよ!
その方が、おじさまも気がまぎれると思うわ!」
クローヴァル
「まあ、確かに音はマシになるだろうが……
……何だ、俺の本棚から引っ張り出してきたのか?」
「まあ、確かに音はマシになるだろうが……
……何だ、俺の本棚から引っ張り出してきたのか?」
クローヴァル
「なるほど、『冬忘れ』か。悪くない選定だな。
この国……ヘイズアイ王国から
海を超えた先にある島国、霧崖国 に伝わる昔話だ」
「なるほど、『冬忘れ』か。悪くない選定だな。
この国……ヘイズアイ王国から
海を超えた先にある島国、
ちょうちょ
「おじさまにも元気になってほしいから、びびっとくるのをえらんだのよ!
表紙も赤くてきれいなお花だし、
きっと幸せで楽しいお話だわ!」
「おじさまにも元気になってほしいから、びびっとくるのをえらんだのよ!
表紙も赤くてきれいなお花だし、
きっと幸せで楽しいお話だわ!」
クローヴァル
「幸せで楽しい……」
「幸せで楽しい……」
大丈夫か?
まあいいか。
若干期待は裏切りそうだが、見せてはいけないようなものでもなし。
クローヴァル
「じゃあ、読むぞ——」
「じゃあ、読むぞ——」