Eno.676 ✿ #000 帰還 - はじまりの場所
冒険の準備をしてくれるらしい、小さなアンドロイドの背を見送ってから数刻ほど経った……気がする。
少なくとも地上で行き交う――姿形が様々で人とは言い難いものもいたが便宜上――人々の顔を何十、何百と視界に入れ憶えるくらいには経った。
あのアンドロイドたちは確か、ここまで飛ぶことはできなかったはず。
あまりにも見つけられない時は私に渡してきた、私にとっては何機目かの『Hanacoカード』に連絡をよこしてくるとは思うが……まあ、そんな手間をかけさせる意味も理由もない。そうでなくとも四捨五入したら千に近いお客さんたちの対応で大忙しだろうから。
「……とは言え、」
頼まれたことについて、そこまで意欲的に取り組む気はない。
ああいうことは私以外にも話がいっているものだし、そしてそういうことには積極的に首を突っ込むものが存外……というか、ここに訪れるものの多くは首を突っ込むもの、首を突っ込んできたものだろう。そんな彼ら彼女らが進んでなんとかすると思うので、私は、
「……私は、どうするかなぁ」
これといって目的があったわけでもない。
ただ、招待状を≪観測者≫から半ば押し付けられるように譲り受けて、そしてそれが過去から送られてきたものだと話を聞かされたから帰ってきただけ。
それだけなのに。
「毎度のことながら回りくどいな、あのヒトもどきは」