Eno.171 クローシア  Log_07『テスト隠しの旅の少女』 - はじまりの場所

空の旅の道中、島の最北西にたどり着いた日のこと。
崖っぷちに、木々に囲まれたいかにも何かありそうな雰囲気の場所を見つけたため、
風も強まってきたこともあって休憩ついでに立ち寄ることにした。

何かめぼしいものはないか探してみると案の定、そこには空藻くうそうが。

ここには巨大化した生物の姿は見当たらず、他にはキャベツやアボカド、花の種なども見つけたが、
それらに混じって出てきたのは一枚の謎の紙だった。

……謎も何もない。明らかにそれは誰かのテストの答案用紙だったんだけど。
……点数は見なかったことにしておこう。

で、ちょうどいい風も吹いてきたから紙飛行機にして飛ばしてみた。なんの気無しに。
捨ててあるんだろうなと思ったし……。

するとその紙飛行機が飛んでいった先には一人の年端も行かぬ青髪の女の子がいて……
飛ばした紙飛行機が、頭にグサリと刺さってしまったのだ。

もちろんすぐに謝罪したが、この答案用紙はそもそもこの子のものらしく。
話によると、母親にかけられた術のおかげで呪われた答案用紙となってしまっているそうで、
捨てたり隠したりしても誰かに見つかると手元に戻ってきてしまうのだとか。
この"誰か"というのはランドラであっても例にもれぬようで、しかも残りの答案用紙は全部で六枚
一枚は既に隠すことに成功したようだが、五回ほど失敗して手元に戻ってきてしまっているとか……。

もしこれが母親に見つかりでもすれば、万魔殿という強制学修施設へと連れて行かれてしまうという。こわやこわや。
いや、すまないとは思ってるんだよ……。見事に一回のチャレンジを失敗に導いてしまったのだから。

詳しく聞けば聞くほどすべて隠すのは絶望的に思えたが……
まぁ、学校や勉強が嫌という気持ちは痛いほどわかるので、できる範囲で協力することにした。
と言っても本人が隠す必要があるし誰にも見つかってはいけないので、できることと言えばよさげな場所を見つけたら教えてあげるくらいしかないが。
唯一の友達のぬいぐるみのクマタンに何かよさげな……人払いとか意地悪してくるやつへの呪いとか……何かしらかけてあげたかったが、
今の自分にできることは限られているので仕方あるまい。
彼女にはいい友人ができることを祈ろう。


そんなこんなで少女──シオンEno.444とは別れ、しばらく野宿しながら食料の許す限り空の旅を再開。
なんとか数日かけて島を一周することができた。
空藻も怪しい場所を探してみると複数見つかり、残すところはグランドマスターシェルの場所だけ──というところだが、
これについても地上の探索を進めていたトトが発見済みであるため、これを記した後で見に行くつもりだ。

……しかし花壇の手入れのために一度庭園へ戻ったところ、留守番をさせていたランドラがしがみついて離れなくなってしまった……。
留守番続きで嫌にでもなったのだろうか。

あんな危険な森に連れて行っても大丈夫かなぁ……?








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