Eno.229 アルメリア=シエナ  始まりより少し前 - Revival - はじまりの場所

※消失した第1回日記の再編版です。

──ストロールグリーン島の外れの何処か。
色とりどりのアルストロメリアの花が咲く花畑がありました。
人気ヒトケもなく、伸び伸びと草花が背を伸ばすことができる、そんな素敵な環境の花畑。


そんな花畑で丸くなり、小さく寝息を立てている人形ヒトガタがひとり。

穏やかな風が草花を、人形ヒトガタの頬を撫でていきます。
流石に少し冷えたのか、うぅん、と身動ぎをしてようやくその人形はゆっくりとその瞳を開きました。

その人形ヒトガタの名はアルメリア
この花畑で生まれた"当代"の花妖精。
オレンジ色の髪色に、透き通った緑の瞳を持っています。


「おはよう、今日も元気だね」

そう花々に声を掛けると、ふわり、と羽を広げて川の方へ向かった様子。

……。
…………。

しばらくすると、水がなみなみと入った如雨露を両手でしっかりと掴んで戻ってきました。
ゆっくりと如雨露を傾けて、咲き誇る花々へ向けてたっぷりの水を与えていきます。

水やりが終われば、既に咲き終わった花がらを丁寧に摘んでいきます。
カビや病気になってしまうリスクを減らす為です。

花妖精は生まれた花畑が枯れてしまったら消えてしまうという特徴があります。
とはいえ、普通に生きていれば役目を果たしていれば早々ない話ではあるのですが。

一通り仕事を終えれば、出来るだけ花を傷めないように腰を下ろしました。
ふぅ、と小さく息を吐いて空を見上げています。

こうして花畑を守るのも大切ではあるけれど役目の一つではあるけれど、もう1つ同じくらい大切な事があるような、ないような。

……それもそのはず。
彼女に自覚はないけれど、花言葉に紐づく存在理由レゾンデートルが此処では果たすことが難しいのです。
幸い・友情の花言葉を送る為には他人の幸せを願うには、少なくとももう一人ヒトがいるのですから。

──どこか難しい顔をしながら流れる雲を目で追う彼女に、風の便り招待状が届くのは、もう少しだけ先のお話。








<< 戻る