Eno.259 カヴィア=エディブル  "嘘" - あざやかな花園

────嘘を吐いた。

「過去の事なんてわかんない」って。

「ぽやぽや~~って感じ」って。

……そんなわけない。

覚えてる。

全部、

全部、

全部、

覚えてる。


苦しかったあの日の記憶も。

泣きたかったあの日の記憶も。

逃げ出したかったあの日の記憶も。

…………絶望した、あの日の記憶も。

覚えてるの。忘れられないの。

ずっと苦しいの。

喉の奥が締め付けられる。

吐きそうになる。

涙が出てしまう。

意味なんてないのに。

なんで、なんで、なんで?

わかんない。──なんでわかんないの?

うるさいな。わからないって言ったらわからないの。

黙っててよ。口を閉じててよ。何も言わないでよ。

ずっと、ずっとずっと耳元で、うるさい。

黙ってよ。周りの声が聞こえずらいんだよ。

大きな女装お兄さんの声も。

キセルを吹く青い天使の声も。

キャスケット帽子をかぶった同士の声も。

冷たいアンデットのナースの声も。

大きなミミが生えたおじぃちゃんの声も。

聞こえないの。聞こえずらいの。

だから黙ってよ。早く。

ねぇ、はやく、はやく!

黙って、黙って、黙って!!

黙れ、黙れ、黙れ!!!

うるさい、黙れよ!!!!

なんで、なんで、あぁ、もう!!!!!

────とっとと消えて。早く。


あーしちゃんはもう、"アンタ"のこと、嫌いだから。

消えてよ。








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