Eno.113 メリジェ  11:町長への手紙 - まぼろしの森林

生まれていた時代が違っていたら、
この弓矢はひとを傷つけていたのだろうか。

争いは悲しいことだと思う。
メリジェの身近なそれは、ロザリーのきょうだいが喧嘩をしたことだったり、
商店でちょっとマナーの悪い客と出くわしたことだったり、些細なことではあったけど。
今は仲良くしている、昼の眷属と夜の眷属が、
武器を持ち戦いをしていたことは、想像するととても悲しく思えた。

そしてそれが、いつか再び来てしまったら。
メリジェの中の不安が、その輪郭を浮かび上がらせる。



純粋なエルフでもオークでもない、
昼の眷属でも夜の眷属でもない、自分は。
ひとりぼっちになるのかな。

だけれど、だからこそ。
もっと知らなければ。
この平和が永遠になるように、
父と母にいっぱいのお祝いをできるように。
メリジェは筆を執る。



町長さんへ

アイオンとユグネラの子、メリジェでえす。
旅行先からごめんなさあい。
今度のお祭りのことで、聞きたいことがあってえ。
町長さんに直接聞こうと思って、お手紙を書いているよお。

お母さんから聞いたんだあ。
“昼と夜が平等な森”はあ、
昔は森じゃなかったのお?
町長さんは、その時から町長さんだったのかなあ。

あのねえ、どうして昔は夜に覆われてたのか、
そしてどうして昼と半分こすることになったのか、知りたいんだあ。
次のお祭りは、1000年の記念でえ。
今までよりもものすごおく盛大にやるんでしょお。

そして、お父さんとお母さんの記念の日でもあるよねえ。
町長さん、他のみんなには内緒にしてほしいんだけどお。
あたし、お父さんとお母さんにお祝いのプレゼントを探しているの!

だから、ちゃんと。知りたいんだあ。
昼と夜が仲良く暮らせることの意味。
これが素敵なことなのは知ってるけどお、
どれだけ素敵なことなのかは、理由がわからないとでしょお。

魔王さまとお友達なんだって、お母さんから聞いてるよお!
いつもみたいに、フガフガ言ってごまかすのはあ、このお手紙ではナシだからねえ。

よろしくお願いしまあす!

メリジェより!








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