Eno.214 スノウ  風船 - まぼろしの森林

*僕はハーフってやつでさ*
*髪や肌の色はパパ譲りで、顔の造形はママ譲りだった*
*ママの家がある日本に住みながら、長期休暇にはパパの家に飛んだりしてね*
*我儘を言えば叶えてくれて、悪いことをすれば叱られる*
*眠れない日にはそばにいて、祝い事には3人で外出した*
*カメラ通話を使って祖父母交えた誕生日会もしていたさ*
*愛情深く育てられたと思うよ*


「蝶よ花よとまではいかないけど。
 天使のようが皆の口癖だったし。
 それに慣れるくらいには可愛がられていたね」

*小学校じゃあ1人で過ごした時間がないくらいには友達に恵まれたし*
*男女関係なく告白も受けたさ*
*僕は足が速かったし、ママ譲りの顔だからさ*
*モテる条件は整っていたってこと*
*家族に可愛い可愛いてチヤホヤされてたから容姿への自信はあったよ*


「その頃の僕はピュアだからさ。
 友達としての好きと思って、全部にYESしてたんだよね。
 修羅場にならなかったのは僕の人徳のおかげ〜なんてね!」

*あの日は小学校卒業のお祝いで出かけてたんだ*
* パパとママの3人でね*
*デパートで買い物をしたりゲームセンターへ行ったり*
*僕は赤色の浮かぶ風船を持ってはしゃいでいたさ*
*いつもよりちょっと良いレストランの待合室*
*ママは予約の確認、パパはトイレに行って*
*僕はソファで待っていたんだよね*
*異様に眠くて、ちょっとだけ目を閉じたんだ*
*次に目を開けた時には知らない場所*

そいつは僕の風船を潰して、裂いて、踏み躙って、跡を残した。








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