Eno.471 アニア・ナムティア  ■■■■■ - ひかりの森






私は悪い子供だから。
いつだって、善人のようにしてはいけない。











君はそれで良いよ。          ――ほん、とうに。

君は悪い子供だ、でもそのままで良い、そうしよう。
そうすれば、君は君を嫌う神さまから逃げられる。       ――はい、私、











「――――。」


目が醒める。
1人だけの寝室、誰も居ない処。
寝汗でびっしょり濡れた頬を拭って
衝動的に躰を起こせば、途端に湧き立つ吐き気に口元を押える。






……ッ、ふ………


孤独に見る夢の終わりは、いつだってあの光景。
焼け付く喉の奥底に、襟元まで色濃く染める汗の冷たさ。

痩せた躰に纏わり付く感触、痛みもなにも一緒くたになって
酩酊に浸された意識の中で私に"示された"己の苦しみへの解についてのこと。
私の人生で、一番の大きな"考え"を見つけてくれたあの人のこと。






「……髪、留め」


鬱陶しい衣服を脱ぎ棄てやりたくなるくらいの不快な肌触り。
他人の目が無ければ、今すぐにだってそうしてやりたいほどの
抑えきれない己への嫌悪と自罰心が、止め処なく私の胸の奥を苛み続ける。






「………。」


罪悪感らしきものを感じる度、私は自分の心が満たされるのを感じる。
それを罰してくれる誰かの痛みを感じる度、私は救われるのを感じる。

偶然の幸運を得られる度、私は
その"揺り戻し"に対する恐怖で満たされる。






んは。


だから、でも、私は"そのまま"でずっと良い。
だって私は、神様さまに嫌われた駄目な生き物。

善く生きようとすればするほどに、私の身には不幸が訪れる。
幸運は凶兆で、明るい偶然は不吉な象徴で
私の最低の過去は、最低な神さまの悪戯で
それを遠ざけるために、私は自分から悪い子で居続けないといけないから。

ずっと、悪い子でいないと、私は良い子になってはダメな子供だから。
それがきもちよくて、私はその度に沢山満たされるんだから。










私の罪と罰は、私だけが決めるんだ。




















ああ、やだな。
またひとりで馬鹿みたいに泣いちゃった。
今日、誰かイイ人探してこなきゃ。



 








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