Eno.663 ジオグリス=エーレンベルク あの日の色を覚えている。 - おだやかな草原
「なあティアナ、」
「親父かお袋のどっちか……どっちもかも、
ああ、と。もしかしたらさ。この島に来たことがあったのかな」
「ジオティアの花束」
綺麗な色の美しい花束だ。見た目の華やかさと、花の香りが感情に働きかける。
「これ、ジオティアって言うんだとさ。
ジオグラスって花もあるんだ。俺と一文字しか違わない」
「この花を見てると、お前の目を思い出すよ。
よく似てる。俺とは似てない色の、」
「……、」
「こんな色じゃ、なかったよな。」
足元に転がっている目玉が俺を見返した。
「……どうだっけ。絵姿でもあればよかったな。
青色なのは同じだった。そうだよな?」
足元に転がっている目玉が俺を見返した。
「忘れたくないな」
足元に転がっている目玉が俺を見返した。
「忘れたくないんだよ……」
瞼の裏にいつも誰かがいる。