Eno.471 アニア・ナムティア  閑話 - Ⅰ - はじまりの場所


「     」


宛ての無い足取りを縫い留めた最初の光景。
眼前に立つ庭園のゲ一卜に、そこを行き交うのは
様々な文化の装いを纏った人々と、人では無いなにものかたち。

石畳の床を挟むように飾り立てる花の色を一瞥して
そこから漂う僅かな香りが、 薄金色の束ね髪を持つ少女の纏う
くたびれた外套に染みた草木の匂いに混ざり往く。



「     」


髙く伸びた木々の合間から注がれる陽光は
青空に浮かぶ島々を抱く温かさと共に
少女の薄ら白い額に、僅かばかりの汗粒を浮かばせる。

首元へと仄かに籠る暖かな感触に
少しばかり無意識な指先を添えてみせた。








「持ってない。」


――そう言った折の"勘違い"に目を細め
いつかの頃に手に入れた"招待状"を手渡せば
その後は、 矢継き早に事を語るス夕ッフから目を逸らす。

その少女は、 随分と不愛想な態度で話に耳を傾けていた。
どんなものでも程々に聞き分けるだけの意欲はあるものの
それはそれとして、 見てくれの態度の悪さは性格ゆえのもの。



「……はい、そうですけど。」


見慣れない端末を手渡されてからの質問には
僅かばかりの聞を置いてから言葉を返す。

そこからの相手の話には、またも適当な風に聞いてぱかりでいて
触りを察してはそれが"依頼"だと理解できる文脈だけを汲み取った。



「――ああ。 お仕事ということですね?
 しっかりお受けいたしますよ、 お任せください」


頼まれたら断れない、という程のものでも無い。
それでも、今の自分にとっては少しでも"宛"が必要なのだと思いだす。

そうであるなら、初めから愛想も良くすれば良いだろうに。
そうできなかったのもまた、 この少女の欠点の1つで。











「ドラ~」



「……で、これなに?」


なんかよく分からん根菜との交遊も任された。
食ベる気には到底ならないので、 一先ずは
食欲以外でのロ寂しさを満たすものとして――
 








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