Eno.472 ふるる  ある日の出来事 - せせらぎの河原

息苦しかった。
ここで産まれて、ここで育って、当たり前の毎日なのに、すごく息苦しかった。

ある日、空を見上げた。
あの場所なら息が出来るかもしれないと思った。
あの日、初めてお城を抜け出した。

空から見た初めての街はとても楽しそうで、歩いてみたくなった。

街を歩いた。

威勢のいい声がする市場。
今日の夕飯の相談をする人たち。
泥んこになって遊んでいる子たち。
行きかう人たちはみんな笑っていた。

そこには自由があった。

これがパパとママが守りたいもの。
これがパパとママが大切にしている風景。

お城に帰った。
たった一度の抜け出しで私の評価は変わっていた。

自分勝手で我儘なお姫様。
この国の次期国王はやはり兄のカーバンクル王子こそふさわしい。
そんな声が聞こえた。

でも、それはとても都合がよかった。
私が家出をしても、またいつもので終わるから。
またいつもの自分勝手なわがままを言ったのだで終わるから。

ほーまちゃん
「主、言わせていていいのぉ?」

ふるる
「いいんだよ、ほーまちゃん、今はこのままでいいの」

ほーまちゃん
「そぉ?それでも主のお顔は暗いわよぉ?」

ふるる
「自分勝手しているのはわかってる、誰になんて言われてもいいけど……パパとママにいらない子って言われないかなって……」

ふるる
「それがね、少し心配かな……でもね、それでもね」


ふるる
「それでも、私はもっと知らないといけないの……この国をコエクシスを」









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