Eno.67 チーバイシーア  枷 - ひかりの森

鞭の音がする。
羊に鞭打ち、仕置きに教育。
牧場ではよくある光景の一つ。
俺はここで羊どもの管理をする、牧羊犬の一匹だ。

その俺が今、羊に尻尾を巻いている。
チーバイシーア。枷付きの羊。
そいつの枷は、外れている。

否、渡り先で外れたと言う。

そんな状態、普通の羊なら逃げている。
だが、こいつは違った。
ご丁寧に、枷と、ぐちゃぐちゃになった対象と一緒に帰ってきた。
枷が外れてなお、任務を遂行したというわけだ。

忠誠心があると言えば聞こえはいいが、羊──獬豸の性質上、それは獰猛であるということ。

新しい枷が付くまで、俺はこれと対面しなければならないらしい。
こいつらは、龍脈に繋がる者たちの断ち方を知っている。
俺も、羊も、龍も然りだ。不死と呼ばれているが、そんなことは全く無い。

失言の一つで、羊のいらん怒りを買って、俺の一生が終わる可能性だってある。
これはお上のお気に入りで、俺は一般的な牧羊犬に過ぎない。
こいつはお咎めなし、俺はきっと不穏分子として処理されるだけだ。

だから、俺はこいつを恐れている。
鞭で怯えていた面影は何処へやら、ただこちらを見つめ、笑っている。








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