Eno.676 ✿ #002 夜潜り - めざめの平原
さて、ひかりの森の探索を始めてからどれほど経っただろう?
毎日欠かさず夜を数えていればその答えもパッと浮かんだのだろうけど、数えるものだったことを思い出したのはここ数日のことだ。
「まさか、」
遠征が終わったらしい、ひかりの森探索初日に奥地へ向かった……らしい面々が加わってから毎日のように"拠点"は賑やかだ。詳しくは知らないけど。
別にそれが悪いことだとは思わない。
自分が関与していない喧騒は、正気かどうかを疑うような奇行に走る定命の者を眺めるのは嫌いじゃない。ただ、雑踏に紛れたくない日はある。
そんな時に思い出した、謎の種――レイチの種を拾ったあの島のこと。
白いランドラのあとを追いかけた道中で登録したマスターシェルまで移動して、少し先へ進み二手に分かれた道を北へ。
あの時は急かされるがままに進んでいたから背を向けるしかなかった空へ、他の目など気にせず身を投げた。
「浮島があるなんてね」
……傍から見たらただの水に見えるだろう液体を一口、呷る。
翼を持つわけではないから飛行ではない。が、霊体でもないので浮遊でもない。空は私にとって海だから自由気ままに漂って辺りを見て回り、新たな発見をしつつも先客がいたから結局、シェルが存在する島に戻った。
しかし、それで人通りに戻っては意味が無いので今はこうして島を覆う山の外、腰を落ち着けられる岩の出っ張りに座って両脚を宙に投げ出している。
このまま朝を迎えるのも悪くないだろう。
「ふたりなら、来ようとも思わなかっただろうなぁ」