Eno.322 恋路 六六  【記録】双魚の記憶① - めざめの平原

鯉に限らず、魚類というのは多産な生き物だ。
だから、実際のところ、私と妹が同じ親から生まれたのかは、
正直よく分からない。

けれど、私たちが龍に“成った”とき、
すぐ傍に端午が居て、私たちは一緒に生まれたんだと思った。


それから私たちは、
大陸の……あの雄大で遮るもののない青の中で暮らした。

そこからは色々な景色を望んだけれども、あまりにも遠い地表のそれらは、
空の底に描かれる美しい模様くらいにしか思えなかった。


そして、だからこそ、
あの頃の空と地上の間で、起きていた事を知る由もなかった。








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