Eno.165 ゆきみ  * - はじまりの場所


「…………」


手を、握っていました。
ずいぶんと細くなった手を、しっかり、握っていました。


「……ここにいますよ」


聴こえているかもわからないけど、言葉をかけました。
もう返ってくることはないと、すっかり、わかっていました。


「…………え?」


なのに、そのひとときだけ。
彼はかすかに口を開いて、ぽつりぽつりと、言葉をこぼしたのです。

『                』


「…………」


それが最後の言葉でした。








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