Eno.113 メリジェ  8:友達への手紙 - まぼろしの森林

メリジェは『ひかりの森』の中でテントを張り、
友人二人への返信を書いていた。

冒険は順調で、どんどん進みたくなった。
花を育てるのも楽しい。前会った花にまた会えて、にこり。
拾った食材で料理をしては、美味しく食べている。
出会えたひとたちと、暖かな会話をしたり、
危機の時に頼らせてもらったり。

他に何を伝えよう。
たくさんたくさん楽しいがあって、
でも自分の持っている言葉じゃ、上手く伝えられなくて。


「むずかしい〜〜……、ん?」



「はらぺこちゃん、お手紙覗き見したいの〜?」


「誰に出してるか知りたいのお?
 仕方ないなあ〜、聞かせてしんぜよお!」


メリジェははらぺこに、
自らの故郷と友人の話をする。



ロザリーとオズとは、幼馴染みであった。
たまたま歳が近くて、一緒に大きくなった。

ロザリーは8人きょうだいの4番目で、しっかり者。
オズの先祖にはユニコーンがいて、白毛はその遺伝なのだという。

物静かで、1人になりがちなロザリーに
差し入れをするのがメリジェで。
オズも仕事を抜け出して、
2人をからかうようにして構ってくれていた。

だけれどケンタウロスは比較的。
ゴブリンは、かなり。短命な種族だった。
エルフやオークと比べれば。
それぞれの基準で、オズは成人して数年経つ。
ロザリーは中年だ。

多様な種族が仲良く暮らす、
“昼と夜が平等な森”では、よくあることだ。
母は2000年を生きるエルフ。
オークも長いとはいえ、300年ほどが限界だ。

だけれどその命の長さが違ったって、
命の価値に違いがあることではない。
誰が死んでしまっても、皆で悲しみ、
新たに生まれた命は、どんな種族だろうと祝福した。
そんな土地で、メリジェは育った。

昼の眷属と夜の眷属も、この森では平等だ。

だけれどハーフエルフは他にいなかった。
メリジェの命の長さは、誰にもわからない。
今は身を潜めている、生来の臆病さは。
ひとつの不安からやって来た。



世界はかつて、闇に覆われていた。




「でねえ〜 その時オズくんがね〜」


「……、はらぺこちゃん、寝ちゃった……。」


「自由だなあ〜」


ふふふ〜と笑って。


「そういえば、
 あたし、お母さんから聞いたことないなあ。
 勇者さまとの冒険のお話……」




ロザリーちゃんとオズくんへ
ふたりで読んでねえ!

お返事、ありがとお!
ふたりとも相変わらずで安心したよお。
でもはらぺこちゃんは非常食じゃないよお。

高いところで怖くないわけじゃないんだよお。
でもでも、それよりも色んなものを見つけたりとか、
色んなヒトたちと出会えたりとか、
そんなわくわくの方が上回ってるから、平気だよお。

お手伝いの、島の探索は順調だよお!
いっぱい資源を探してえ、歩いてえ、ご飯食べてえ。
サバイバル!って感じだよお。
お父さんのお仕事の手伝いしてて、よかったあ。
でもね、たくさ〜ん手伝ってくれるヒトがいてね。
頼れるヒトばかりで、ほんとよかったよお。
あたしも頼られるように頑張りたいなあ。

お祭りの準備も進んでるんだねえ!
町長さんにもお手紙書かなきゃだねえ。
オズくんはイケメンコンテストに出ないのお?
ロザリーちゃん、
屋台のあの『名前を言ってはいけないおやつ』、
来るといいねえ。

お祭り、2人と一緒に回るの楽しみにしてるからあ!

ロザリーちゃんはがんばりすぎないで、
オズくんはサボりすぎないでねえ。

ぴーえす
ロザリーちゃん、あたし、
悪いゴブリンとは会ってないよお!
もし出会ったら、お説教して
いいゴブリンになってもらうからあ。
だいじょうぶ!

メリジェより!





「イケメンコンテストとか出るわけないだろ景品野菜じゃねえんだぞ」
「……ふふ」
「お、ロザリーが笑うなんて珍しいな」
「メリジェがいつも通りで、安心しただけよ」
「……そだな」








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