Eno.330 ドド    - はじまりの場所

チリン、チリン。そんな鈴の音が2つ、夜の廊下に響いていた。
そのまま2人の鈴の音はとある部屋に入っていった。



「なぁ、ほんとにやるのか?」
「それしかないから」
あぁ、そんな不安そうな顔をしないで。大丈夫、上手くいくから。
「いくらそれしか方法がないって言っても……万が一があるだろ。まだ魔石は分からないことが多いんだぞ!」
「この前使ったやつと同じやつをかき集めてきたから。大丈夫、問題ないよ」
この前たまたま見つけた魔石は怪我をしたところに使うとみるみる傷が治っていくのを見た。
そこから手術に使えないかと考え研究してきた。その成果をみんなに見せる時でもあるんだ。
「ここでやらなきゃハイアベカ家の兄弟医者の名が廃るよ、兄さん」
大丈夫。何度も頭の中でイメージをした。兄さんも手伝ってくれるならなんでも出来る。
「……1回決めると曲がらないからなぁ、しょうがないなー。やるよやる。どんなときもボクら2人は一緒だ」
ニッと笑うその顔を見て安心した。明日の手術は上手くいく。
「ならもう今日は寝よう。過去一難しい手術になるだろうし」
「そうだね、寝ようか。」



チリンチリンチリン。

チリンチリンチリン。

周りがうるさい。
何があった?目の前の光景が理解できない。
いやしたくない。したくないが、手に、生ぬるい感覚が離れない。
あぁ、そんな顔をしないで、兄さん。
手先が冷たい。でも生ぬるい、液体が。

あぁ、患者さん母さん、そんな目で見ないでくれ。



チリン。








<< 戻る