Eno.285 サリュート  川底の星  - せせらぎの河原

*─

あたたかな木洩れ日の下、星あかりの夜の下、
いつも変わらずせせらぎの音を奏でる、その広い川はまるで銀河のようでした。

島の探索で疲れると、せせらぎの河原におとずれて、
その透きとおった水の流れをのぞき込むのが少年の日課になりつつありました。

ときおり、水面みなもに魚が顔を出すと、波紋がきらきら飛沫をひろげて、
それはまるで彗星のちりの尾のようでした。

何かを思い出しそうで、
何も思い出せずに、
この島のうつくしい空と水と、
不思議な力を秘めた花たちの揺れるのを、
頭上に星のきらめくのを、
ただ、だまって見ているのでした。……

─*
 

 




きれいな水を惜しげもなく花や土に撒いていると、なんだかすごく変な気がする。
ぼんやりとした記憶の中で、水はひどく貴重なものだったから。

旅路の戦闘で助けてくれた人々に思いを馳せる。
空を行く人もいれば、地を踏んで歩く人もいた。
人のまねをして歩こうとすると、足を捻ってよろけた。自分はどうやら歩けない。

義足の青年を思い起こす。
慣れれば彼のように、しっかり地面を歩ける日が、いつか自分にも来るのだろうか?



「……島の現地調査がミッションだってさ」


このオレンジの植物みたいな生き物はどうしてついてくるんだろう。
置き去って行こうとすると、びっくりするほど大きな声で鳴く。
それなのに、何か世話を焼こうとしてもぜんぜん興味をしめさない。


この島はいろんなことが不思議だ。
だけど空は青くて、──記憶よりもずっと暖かい。








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