Eno.534 玲沙  ここ数日間のまとめ - たそがれの頂

月猫亭の女将に勧められ、招待状片手にこの地へ来た。
それが大体一週間ほど前。

最初に案内人のハナコという自動人形に出会い、次にランドラと出会った。
ランドラは私についてくる。
マンドラゴラのようなものだと思われるが、その動きは植物の見た目をした動物のよう。
薄緑色の体に葉っぱの傘を持ったこの子を、「ふわまき」と名付けた。

ふわまきは動く。喋る(鳴く)。食事をする。眠る。
私の動きを真似してくる事もある。
可愛らしい。とても可愛らしい。
これから世話になるだろう。



人と話した。
初めて声をかけてきたのは、ゼェーレと名乗る魔術師だった。

彼は声色こそ歳を重ねたように聞こえるが、険しい山の頂によく来る。
足腰はかなり強そうだ。

そして料理が上手い。素朴な家庭料理の美味しさ。
素材の味をしっかり活かした味付けが得意なのだろうか。
それから、片付けに魔法を使う。
手も洗剤も使わずに、調理器具や食器類を綺麗にする。
是非とも覚えて帰りたい魔法だ。
私にも同じような事ができれば、女将も喜んでくれるだろう。

彼は物知りで、探求心旺盛で、心配性だ。
島の探索も本格的に始まったようだし、彼にあまり心配されないよう立ち回らなければ。
私は彼の血圧が心配になってしまう。



巨木の近くの拠点にて、不思議な羊に出会った。
羊のようであり、雲のようでもある。
水分を含めば雨を降らせ、電気を帯びれば雷を落とすのだという。

本人(本羊)は至って温厚、のんびりと過ごしているようだ。
その触り心地は抜群であった。

幼き頃、夏の空に浮かぶ大きな雲に埋もれたいと思っていた。
その願望が叶ったと言っていい。
「人をダメにするもふもふ」の名は伊達ではなかった。

またどこかで会えるだろうか。
またあのもふもふに触らせてくれるだろうか。



良き夜に、花壇の世話と戦闘に顔を見た金髪の少女。
直接会話した事は無いが、一応面識はある……だろう。
不思議な照明器具を持っていた。
歳のわりに落ち着いた子だと思う。

機会があれば、きちんと会って話せるだろうか。

彼女は「サンタクロース」という存在が来なかったことを、少しだけ憂いていたように見える。
「サンタクロース」が女将の云う「惨太」と同一のものであるならば、来ない方が吉であろうか。
……彼女の世界にも「惨太」が居るかどうかは分からない。ちゃんと調べてみるべきか。




ほんの数日ではあるが、静かに色々な事があった。
これからも気の向くままに過ごすとしよう。
まだ観光できていない場所も多いのだから。

 








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