Eno.405 逆さの魔女マサカマ  【閑話】魔女狩りの話 - くらやみの森

魔女狩りのナガリ
「……それで、まだ話があるのか」


 睨みつけるようにして魔女狩りは言葉を続けた。
 目前には焚火が燃えている。
 暖を取りながら魔女だった物は話し始める。
 ついでに川魚でも焼きながら。

マサカマ
「納得がいかないというか……
 君はまだ私を魔女と呼ぶかな?」

魔女狩りのナガリ
「……うーん……
 これまでに生き残った奴は居なかった
 定義については再協議かもしれないな……」

マサカマ
「定義が曖昧なもので私を裁いたのか……」


 最早ひっくり返ってしまってどうでもよかった魔女はどうでもよさそうに言った。
 実際、どうでもよかった、少しだけ好奇心はあったけれど。

魔女狩りのナガリ
「魔女のそもそもの定義は……、魔女狩りの話もしないとか……」




 述した世界に仇為す者という魔女の定義は極めて狭義だ。
 固有の魔法を持ち、そして固有の魔法が世界にとって役立たない者
 それが魔女の定義の始まりだった。

 始まりの魔女が単に女性だったから、単に翻訳の都合で?
 様々な理由があったのかもしれないが今となっては歴史の影に埋もれ、わからないことだ。
 男性であっても魔女と呼ぶ場合があるのはそのせいだ。

 有益な魔法の定義は日々更新され続けている、有益な物はあればあるだけ良い。
 けれど本に書ける文字の数は決まっている。

 役立たない魔法は世界の文字数制限を圧迫してしまう。
 役立たない魔法は邪魔になるから消さなくてはならない。

 そうして生まれたのが魔女狩り達だった。

 複製の魔法によって作られた彼らは、元の人間がどうであれ銀の髪を持つ。
 そしてそれぞれが複製された魔法を持つのだ。


魔女狩りのナガリ
「おい、寝るな」

マサカマ
「いたい……もっと面白く話して……」

魔女狩りのナガリ
「注文が多い」









<< 戻る