Eno.330 ドド    - はじまりの場所

ソラニワの世界この世界から変わって都市国家観世かんぜ
時刻は昼。人々は昼休憩をしている時間だ。
昼休憩は平等にくる。それは彼、霧雲魔石庁きぐもませきちょう政策策定局せいさくさくていきょく夜義隊やぎたい梅警務官うめけいむかん所属、榊原 誠さかきばら まことにも例外ではない。
たばこ屋でいつも吸っている蒼夜星あおよほしを購入し、そのまま外で一服。
ほんのりと苦いが爽やかなこのたばこが好きだ。
そんなことをぼんやりと考えていると急に周りが薄暗くなった。雨だろうか?
そのまま顔を上にあげると……。
「お隣、ヨロシ?」

チリン。

そこには長い白髪と角、顔を布で隠している大男がいた。


「なあ、その顔隠すのなんでだ?」
珍しく素顔を出して錦夜花一番高いたばこを今自分の隣で吸っている大男に問いかける。
「んー昔の伝統を引き継いでいる、から?」
ふー、と煙を吐き出しながらそう答えた。
「そうじゃない、だとしても不便だろ。顔を隠すのは」
いくら伝統でも、だ。
伝承での役割は『人間に恋した神の姫の姿を認識させる』ために特別な仮面をつけさせた。
ならもういらないのでは?少なくとも、もう神の姫が愛した人間の男は生きてない。
「……ここでひとつ、ボクの仮設を話そうか?」
「仮設?」
「仮面は神々から自分は人間の男とバレないようにする仮設」
バレないように?なんでだ?
吸ったたばこを灰皿に押し付け、新しいのに火をつける。
「神々ってのはプライドとか高いイメージあるからさー、人間を婿として連れてきたら……うん」
言葉を濁しているが言いたいことはわかる。
「伝承では神々が作ったとされる仮面、あれ姫が人間とバレないように作って被せたんじゃない?そのままなんかの神の息子と結婚~みたいに言いくるめて……」
「子どもも神の子とするために被せた……ってことか?」
「そーゆーこと。人間だとバレないように今でも似たような仮面をして隠している、みたいな」
以上、■■・ ハイアベカさんの仮設でした~と茶化すように言う。

今も顔を隠しているのは自分らは人間と思わせないため、という仮説。なんとなく納得できる。
空に煙を溶かしながらそう思った。
ああ、そろそろ昼休憩が終わる。そのまま礼を言って職場に戻っていく。








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