Eno.371 リン  ただの駒 - おだやかな草原

人間関係は良すぎても悪すぎても、結局の所は揉め事になる。

その最たる例が捨てて来た自国だ。
愛国心という守るべきモノへの大義を持って他国と面倒事を起こす。
対等な利害関係以上に何かを持つとロクな事にならん。
故に民は駒であり、兵は駒であり、将もまた駒である。
つまるところ『人は皆、分け隔てなくただの駒に過ぎない』駒に情を持つべきではない。

リン
「守るべきモノや倒すべきモノはそれに至る関係を持つから出来る。常に対等な取引が出来る存在だけ居ればそれでいい。過度な干渉は不要だ」




戦場にそういった情を持ち込む者も少なくなかった。
そういった奴ほど自分の能力以上の働きをしようとして未帰還となる。
良い奴と周りから慕われる者は他の奴と比べてその辺りの線引きが下手だ。
駒は駒らしく自分の役割だけこなしていれば良いというのに迷惑な話である。

同年代の同期が居ない私が不憫だと意味不明な事を言って先輩面してきた奴。
不要だと言っているのにも関わらず嗜好品を持ってくる妙な奴。
勝手に同じぐらいの年だという妹と重ねて過度な心配をしてくる奴。
どいつも揃って周囲から良い奴だと言われていた者達だ。すぐに居なくなったけどな。

勝利を収める事はあれど、一切の犠牲を出さないなんて神のような所業は出来ない。
彼らと共に何度も戦場へ出て、私が今こうしているのも彼らが駒として働いたからだ。
だが、それ以上でもそれ以下でもない。指揮を執る者が駒に情を抱いて何になる。
ポーンを一つも取られずにチェスに勝てというのか。バカバカしい。

リン
「ただの駒であるだけで良かったんだよ。そうすれば今も酒や煙草を楽しめていたかもしれないというのに」











<< 戻る