Eno.125 食■世界オブスキュラ  A - ひみつの庭

大好きだったアンヘルが、兄のように慕っていたアンヘルが食べられた。
ウェンディゴに引っ越し、得意の魔法で国のお役に立てるんだと喜んでいたアンヘルが!

どうして気付かなかったのか、どうして気づけなかったのか。
知らなかった、この世界の仕組みを。
使者の会話を盗み聞きして聞き取れた部分を推察して知ったものの。無知ほど罪なものはない。

 
「うっ、うぅ…、アンヘル…アンヘルが…

 
「メル、泣かないで…も、もしかしたら違う人の話かもしれないし…」


アンヘルと両想いだったメルが泣いている。
俺の目の前でほろほろと、綺麗な涙を流していた。

 
大好きだったのに、愛してたのに、こんなこと、酷い

 
「メル、」



何も言えなかった。
ただ泣いてるメルを抱きしめる事しか、アンヘルと違って俺は役立たずだった。

アンヘルを失った俺たちは寂しさを抱えたまま成長した。
俺の後ろをついてきた弟のように可愛かったメルは無気力になり口数が減ったと思う。
好きだった絵を見せる相手がいなくなり、近くにある丘で一人過ごす時間が増えた。

俺はまだアンヘルが生きてるんじゃないかと諦めきれないまま18歳になった。
ウェンディゴから使者がきて仕事に就く年齢だと迎えられて。

絶対に生き延びてやるからとメルに再会を約束させ、俺は脱走した。









































ハイネ
あの時、メルを羨ましいと思ったんだ









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