Eno.305 クロタネ *回想 - はじまりの場所
好奇心から、少年は七不思議を試したわけではありませんでした。
いや、もしかしたら、ほんの少しは、そういった気持ちもあったかもしれません。
けれど、どうしても会いたい人がいて、ただ、それだけの思いで
ただの噂話に縋ったのでした。
一つ、入れ替わる様に。
少年は顔を失いました。
一つ、入れ替わる様に、
少年は、名前を失いました。
■■■■という少年が、最後に目にしたのは、
自分に手を伸ばす、獏のような何かなのでした。
獏は、【鉄】を食すといいますが
そのように、獏はしたのでしょう。
けれど、少年は。
怪異へ怒るわけでもなく、
ただ、ただ。今もなお。
入れ替わった怪異たちが、幸せになることを祈っています。
勿論、自分が元通りになりたいとも思っています。
怪異となった少年は、いくつか忘れてしまったこともありますが、
それでも、大事なことを忘れぬよう、沢山メモをしては、ポケットにしまい込むのでした。
「うげー…いっぱいものいれすぎて、ポケットの中ぐちゃぐちゃ・・・」
「今度、鞄つくろっかなー……」
「……あ、これ」
「……だいじなもの。 今度はもーっといい作品つくるからなー!」
小さく折りたたんだのは、自分で作った切り絵と、色んな人や自分の似顔絵なのでした。
きっとここでの出会いも、風景も、メモ帳に残すことでしょう。
いや、もしかしたら、ほんの少しは、そういった気持ちもあったかもしれません。
けれど、どうしても会いたい人がいて、ただ、それだけの思いで
ただの噂話に縋ったのでした。
一つ、入れ替わる様に。
少年は顔を失いました。
一つ、入れ替わる様に、
少年は、名前を失いました。
■■■■という少年が、最後に目にしたのは、
自分に手を伸ばす、獏のような何かなのでした。
獏は、【鉄】を食すといいますが
そのように、獏はしたのでしょう。
けれど、少年は。
怪異へ怒るわけでもなく、
ただ、ただ。今もなお。
入れ替わった怪異たちが、幸せになることを祈っています。
勿論、自分が元通りになりたいとも思っています。
怪異となった少年は、いくつか忘れてしまったこともありますが、
それでも、大事なことを忘れぬよう、沢山メモをしては、ポケットにしまい込むのでした。
「うげー…いっぱいものいれすぎて、ポケットの中ぐちゃぐちゃ・・・」
「今度、鞄つくろっかなー……」
「……あ、これ」
「……だいじなもの。 今度はもーっといい作品つくるからなー!」
小さく折りたたんだのは、自分で作った切り絵と、色んな人や自分の似顔絵なのでした。
きっとここでの出会いも、風景も、メモ帳に残すことでしょう。