Eno.33 半分屋のグレゴリー  1:night - くらやみの森



世に不思議と云うものは幾らもあるのだと、幼いその時分よりグレゴリーは知っていたのです。



グレゴリーは母と父の半分ずつと、合わせてひとつ分の愛情を受けてこの世に産まれました。
そこにはひとつという完全たるものが確かに含まれていた筈なのです。
しかして何故かどうして今グレゴリーはどうにも半分なのでした。

はてとグレゴリーが首傾げ後ろを振り返る頃には、その身はもうすっかり醜いものに変わっていたのです。
母が撫ぜたまあるい頭には邪魔くさい“とんがり”が。父が押した滑らかな背には奇天烈な“羽毛”が。
それは目覚めた時に突然足が増えているような、何れ腐ったものを好むような変化でした。

少なくともグレゴリーの柔らかいだけの掌に、何とも不思議な力がある事だけは彼等の完全なひとつとなりました。









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