Eno.740 【背中を押す者】  裏方の後日談。 - あざやかな花園

 
「――おい、聞いてるのか色ボケ」


 
「はいはい。そんなに怒らなくてもちゃんと聞いてるわよぉ」


 
「ふん、どうだか」


 
「そんな態度を取るくせに、
 話を聞いてほしいときにアタシを呼ぶところ、好きよ」

 
やめろ気色悪い


 
「俺は貴様の性根も、美しくない器も、
 ころころと設定が変わるところも、心底嫌いだ」


 
「ころころ変わるのは
 可愛がってる個体の好みに合わせるから仕方ないじゃない」

 
「本当に気難しい子だこと。
 うふふ。嫌われてても、アタシはずっと好きよ?」


 
「…………」


 
「あら、しつこかったかしら。ごめんなさいね。
 それで?続きを聞かせてちょうだい」


 
「ふん」

 
「続きも何も、今回面倒事を起こした人間と
 現状最後だった【背中を押す者】は無事処刑された」

 
「想定外のことが起きた以上、
 干渉した人間全ての消滅を確認するまで【背中を押す者】は凍結する。
 以上だ」


 
「あら、もったいない。可愛らしくて好きだったのに」


 
「……また今回のようなことが起きても面倒だからな」


 
「残念だけど、それもそうよね。
 アタシもお楽しみ中に邪魔が入ると萎えるもの。わかるわぁ」

 
貴様と一緒にするな!!!!!!!!!


 
「んもう。いつも思うけどそんなに怒らなくてもいいじゃないの」

 
貴様がふざけたことばかり言うからだろうが!!!!!!!!!!!!!!


 
「ふざけた覚えはないのだけど。
 そんなだから大好きなお兄様に邪魔がられるのよ?」


 
「…………」

 
「それは今関係ないだろう」



 
「ちょっと!私の仕事中に騒ぐなっていつも言ってるでしょ!
 また人間の器で蹴り出されたいわけ?」


 
「騒いでも騒がなくても大差ないだろうが」

 
「そうね。そういうワガママはミスを減らしてから言ってちょうだい」


 
その扱いやめなさいよ!!


 
「で?何の話してたのよ。本体からの指示はなかったはずだけど」


 
「暇つぶし絡みの話だ。貴様には関係ない」

 
「ほんっとかわいくないわね」

 
「かわいくなくて結構だ」


 
「ああ、そうだ」

 
「妖精、これを受け取れ」


 
「は?」



「ら?」



 
「……何よこのブッサイクな魔物は」


 
「今回採用した役の終わりまでくっついていたので念のため回収した。
 引き取れ。処分方法は任せる」


 
「なんで私が。そこのお話相手に譲ればいいじゃないの」

 
「正気か?こいつの捕食範囲だぞ

 
「あっ……そうよね。……うん。これはだめだわ」



「どら~?」


 
「……」

 
「まぁ、事情はわかった。こっちで処分しておいてあげる」


 
「ふん。端からそう応えていればいいものを」


 
「ほんっと態度だけデカいわね……」


 
「はいはい、喧嘩しないの。
 演出家、今回はこれでお開きでいいのかしら?」


 
「ああ、俺の気は済んだ。どこへなりとも行け。俺も戻る」



 
「はっや、もういないし」


 
「それじゃ、アタシも行くわね。ミス減らせるように頑張って~」



 
「ったく、どいつもこいつも」


 
「……」

 
「お前、どうしてやろうかしらね?」



「どらら~」









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